早いもので気がつけば今年(2020年)も残すところ1か月弱です。今年はとにかくコロナに振り回された1年と言って差し支えないでしょう。そして、企業経営もさまざまな面で大きな変革を求められた1年でありました。
その最たるものがテレワークへの対応でしょう。緊急対応で始まったテレワークは、必ずしもオフィスに集まらなくとも仕事はできる、会社は回る、という思わぬ成功体験が社会に共有され、今やテレワークは常識的な就業スタイルのひとつとして定着した感が強くあります。
「ジョブ型管理」への不安
春のテレワークがスタートした当初に、経営者の方々から噴出した疑問や不安は、主に管理の問題でした。
「自宅でちゃんと仕事をしているのかどうかを、いかに管理するのか」
「ジョブ型管理は、中小企業でもできるのか」
など......。
まずは勤務場所が変更になるという物理的な変化への対応で、経営者の頭は一杯になったわけなのです。ただ、実際にはまずはテレワーク実施に動くことが優先であり、細かいことは後回しにしてやってみようというノリで、多くの企業がテレワーク取り組みに入っていった、といった感じではなかったでしょうか。
私の周囲では、自粛期間中に全社員の勤務時間総計の80%以上がテレワーク勤務になったという企業も少なくなかったように思いますが、感染拡大が一度ひと段落した秋には、その比率が半分以下にまで戻ったという印象です。比率を戻した経営者に、その理由をたずねてみると、テレワーク導入前に疑問点や不安点としてあげていた管理の問題ではなく、むしろまったく別の懸念が出ていたようなのです。何人かの経営者が口にしていたのは、リアル・コミュニケーションの欠如が及ぼすマイナス効果、という新たな懸念でした。
「社員同士が同じ空気を吸って仕事をしていないことが、こんなにも職場を機械的にしてしまうものなのかと、ある意味恐怖に近いものを感じた」
「わざわざオンラインでつながらないとちょっとしたコミュニケーションすらとれないことにより、社内ムードがつくれないというマイナスを実感した」
「シフト制で出勤日とテレワーク日を決めて3か月ほどやってみたが、職場が常にまばらでトータルのコミュニケーションが減り開店休業感から、皆の活力欠如を感じた」
テレワークをコロナ対応で初めて導入してみたという点以外の共通点はなく、業界も異なる中小企業の社長の方々から、このように類似した話が聞かれたのです。