「GoToトラベル利用者はコロナ発症が2倍」東大チームが初調査 「根拠あり」で菅首相はどうする?(1)

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   大阪市や旭川市が医療崩壊して自衛隊の救援をあおぐ事態になっても「GoToトラベル事業」に執着する菅義偉首相。「GoToトラベルによって感染が拡大したというエビデンス(根拠)がないと専門家も言っている」というのが、菅首相の拠りどころだった。

   しかし、GoToトラベルキャンペーンの利用者のほうが、利用しなかった人よりも新型コロナウイルス感染を疑わせる症状が多いという調査結果を東京大学などの研究チームが発表した。この専門家の見解を菅首相はどう受け止めるのか。

  • 「GoToトラベル」に執着する菅義偉首相
    「GoToトラベル」に執着する菅義偉首相
  • 「GoToトラベル」に執着する菅義偉首相

新型コロナ特有の嗅覚・味覚の異常が2倍多い

   今回、研究結果を発表したのは、宮脇敦士・東京大学大学院助教、田淵貴大・大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部副部長、遠又靖丈・神奈川県立保健福祉大学大学院准教授、津川友介・米カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教授によって構成される共同研究チームだ。

   研究論文は通常、「査読」(論文が学術誌に掲載される前に行われる同じ分野の研究者らによる評価・検証)が行われた後に正式に発表されるものだが、今回は「緊急性が高い」として、査読前の原稿を12月6付でインターネット上に公開した。

   研究チームによると、GoToトラベルと感染リスクの関係を示す調査は国内では初めて。菅首相は感染拡大を受けたGoToトラベルの見直しには否定的で、感染拡大の主要因とする「証拠はない」という専門家見解を繰り返しているが、本当に関係ないといえるのかを調査した。

   PCR検査による確定診断とは異なるが、嗅覚・味覚の異常など、新型コロナ特有の症状を訴えた人の割合が、GoToトラベルの利用者では、利用していない人に比べて、統計学上、約2倍もの差があることがわかった。

   調査は15~79歳の男女約2万8000人を対象に今年8月末から9月末にインターネットで実施した。過去1か月以内に新型コロナを示唆する5つの症状(発熱、咽頭痛、咳、頭痛、嗅覚・味覚異常)を経験していた人の割合との関連を調べた。

   その結果、たとえば、嗅覚・味覚の異常を訴えた人の割合はGoToトラベルの利用者で2.6%なのに対し、利用しなかった人は1.7%だった。年齢や健康状態の影響などを取り除く統計処理を施すと、有症率の差は約2倍に上った。発熱や咳、頭痛を含めた計5項目すべてで、利用者のほうが有症率は高かった=下図参照

(図表)GoToトラベル利用者の新型コロナ症状の発症率(研究チーム発表資料より)
(図表)GoToトラベル利用者の新型コロナ症状の発症率(研究チーム発表資料より)

   ところで、菅義偉首相と小池百合子都知事は、東京発着のGoToトラベルについて、「高齢者と基礎疾患を持っている人は自粛してほしい」と要請している。そこで、研究チームは高齢者と基礎疾患と持っている人についても、GoToトラベルとの関連を調べた。

   年齢別では65歳未満の若い世代のほうが感染を疑わせる症状を経験している割合が高かった。これは、高齢者のほうが新型コロナ感染を恐れているため、たとえ旅行をしても慎重に行動し、結果的に感染リスクを増加させていなかった可能性があるという。

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