「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家法)が施行されて5年が経過した。
2020年11月26日、国土交通省は全国の空き家対策の状況を発表。空き家対策はどの程度進んでいるのか――。
全国の空き家情報は38万物件にのぼる
今年3月31日時点で、空家等対策計画は1741の全国の市区町村のうち69.3%にあたる1208市区町村で策定されている。2020年度末には78.8%にあたる1373市区町村で策定される見込みだ。
一方、全国の市町村で法定協議会を設置しているのは、1741の全国の市区町村のうち46.6%の812市区町村、2020年度末には53.2%にあたる927市区町村で策定される見込みにとどまっている。
では、実際に空き家に対する措置はどの程度進んでいるのだろうか――。
全国の市区町村により、所有者の特定事務が完了している空き家(自治体が所有者の特定のために確認した固定資産税や登記簿、戸籍、住民票の情報によって事務手続きが終了している空き家)は38万物件にのぼる。
このうち、所有者が特定された空き家は33万9000物件で、市区町村により空家法に基づく措置やその他の空き家対策に関する取り組みで、所有者による除却等が行われたのが7万7921物件となっている。
所有者が特定された空き家33万9000物件の中には、特定空家等として把握された3万物件ある。特定空家等とは、(1)倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態(2)著しく衛生上有害となるおそれのある状態(3)適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態(4)その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態――の空き家を指す。
この特定空家等に対しては、除却、修繕、立木竹の伐採等の措置の助言または指導、勧告、命令が可能で、さらに要件が明確化された行政代執行の方法により強制執行が可能となっている。
特定空家等として把握された3万物件のうち1万1887物件については市区町村の取り組みにより除却等が実施され、残る特定空家等で市町村が把握している物件数は1万7636物件となっている。
つまり、空き家として何らかの措置が行われたのは、先の7万7921物件と特定空家等の1万1887物件の合計の8万9808物件となっているのだ。
空き家への措置「着実に進んでいるものの、そのペースは緩やか」
特に大きな問題となっている特定空家等では、着実に措置が行われている。別表1は、国交省の資料から筆者が作成した「特定空家等に対する措置の推移」、別表2は「行政代執行、略式代執行の件数の推移」だ。
それでも、空き家法が施行されて5年が経過しても、所有者特定事務の完了した空き家のうち、23%程度の約9万物件しか措置が施されていないのが実態だ。空き家件数そのものは、所有者特定事務が完了した38万物件をはるかに上回るものと推測される。その点では、空き家に対する措置は、「着実に進んでいるものの、そのペースは緩やか」と表現せざるを得ない状況だろう。
特に、倒壊等著しく保安上の危険がある特定空家等の半数以下の1万2000物件程度しか措置されていない点は問題。特定空家等については、倒壊等の危険性のほかにも、犯罪に利用される危険性なども指摘されており、早急な対応が必要だ。
問題はこうした空き家対策において、所有者が空き家を処分したくとも、売却や賃借がままならず、また再活用が望めなければ、なかなか措置は進まない。市町村もさまざまなアイデアで空き家の活用を進めているものの、有効打が見つからない状況だ。そのうえ、少子高齢化が進み、特に地方においては空き家がどんどん発生している状況がある。
空家対策は「終わりなき戦い」の様相を呈している。今後も、一段とスピードアップして対策を続けていく必要があろう。(鷲尾香一)