企業の後継者の不在率の高止まり傾向が続くなか、企業信用調査の帝国データバンクの調査によると、全国の企業の後継者不在率は65.1%で、2011年以降の最低を更新したことがわかった。2020年11月30日の発表。
3年連続の低下で、後継者不在率は2017年の66.5%をピークに、緩やかだが改善してきている。
全国の17万社で後継者不在
帝国データバンクは2018~20年の3年を対象に、事業承継の実態について分析可能な約26万6000社(全国・全業種)の後継者の決定状況と事業承継動向について調査した。それによると、企業全体の65.1%に当たる約17万社で後継者が不在だった。
前年までの後継者不在率は、2018年66.4%、2019年65.2%で、低下する傾向にある。
社長年代別では2019年と比べて「30代未満」(2019年=91.9% → 2020年=92.7%)と「80代以上」(2019年、2020年とも31.8%)以外では、後継者不在率は低下。特に、「40代」(19年=85.8% → 20年=84.5%)以降の後継者不在率は調査開始以来で最低となっており、「50代」(19年=71.6% → 20年=69.4%)では初めて7割を下回ったほか、「60代」(19年=49.5% → 20年=48.2%)2年連続で不在率が5割を下回るなど低下傾向がより強まった。
業種別で最も不在率が高いのは「建設業」で70.5%。全7業種(建設、製造、卸売、小売、運輸・通信、サービス、不動産)のうち唯一7割台となっているが、最も高い2018年(71.4%)からは2年連続で低下している。
最も低いのは「製造業」(57.9%)で唯一の5割台。ただ、製造業の中でも「木材製品」(59.0%)や「家具」(61.4%)など15業種中8業種は前年を上回っており、分野によって後継者不在の動向にバラつきがみられた。
同族承継が急減! 代わりは内部昇格
2018年以降の事業承継が判明した全国約3万3000社について、先代経営者との関係性(就任経緯別)をみると、20年の事業承継は「同族承継」の割合が34.2%で、「内部昇格」(34.1%)、「外部招聘」(8.3%)などを抑え、最も高かった。
しかし、同族承継は2018年(42.7%)から10ポイント近く下落しており、急減といっていい傾向にある。
一方、血縁関係によらない役員などを登用した「内部昇格」は、2018年には31.4%だったがジワリと拡大。20年には同族承継のわずか0.1ポイント差に迫った。社外の第三者が就任した「外部招聘」も2018年には6.9%だったが、高まりがみられる。企業の事業承継は、同族者から幹部社員など社内外の第三者に人材を求める傾向が強まっている。