女子テニスで世界ランク3位の大坂なおみ選手を主人公として描いた少女漫画「アンライバルドNAOMI天下一」(講談社)の連載が公表されて、海外で話題になっています。
大坂選手が自身のツイッターでキャラクターのイラストと、「本当に興奮している!」とコメントすると、たちまち世界中に拡散。英BBC放送がトップ記事で取り上げるなど、各国メディアが相次いで報じる現象が起きています。
日本国内よりも海外で盛り上がっているこの話題。世界の人々はなぜ、「NAOMI」に興奮するのでしょうか?
あのBBCが「大坂なおみの少女漫画が始まる!」と報道
講談社の少女マンガ誌「なかよし」で、大坂なおみ選手がキャラクターとして登場する「アンライバルド NAOMI天下一」が新連載されることが発表されると、世界中に期待の声が広がりました。お堅いイメージの英BBC放送がトップ記事で報じるなど、スポーツやエンターテイメントの域を超えたニュースになっています。
Japanese tennis star Naomi Osaka has inspired a new manga character who will debut in Nakayoshi magazine
(日本のテニススター大坂なおみ選手が、雑誌「なかよし」の新しい漫画キャラクターとして登場する:英BBC放送)
inspire:鼓舞する、激励する、感情を人に吹き込む
「inspire」は「鼓舞する、激励する、感情を人に吹き込む」といった意味の英語ですが、大坂選手に強く影響を受けた主人公が登場する、といったニュアンスでしょうか。
連載の英語タイトルは「Unrivalled Naomi Tenka-ichi」で、日本語タイトルにもなっている「Unrivalled」(アンライバルド)は、「rival」(ライバル)がいない、つまり「無敵」「敵なし」という意味です。
講談社のホームページによると、「宇宙を舞台」にして「元気でキュートななおみ」が「天下一のスペーステニス・プレーヤーを目指して熱い戦いを繰り広げる痛快アクション」とあります。どうやら、これまでの「スポ根」漫画とは一線を画す、壮大なスケールの作品になるようですが、海外メディアが注目したのは、次のポイントでした。
Naomi Osaka inspires rare biracial Japanese manga character
(大坂なおみ選手はハーフの日本人としてはめずらしく、漫画の主人公になる:米ネットメディア)
rare:めずらしい、まれな、レアな
biracial:ハーフの、バイレイシャルの、
大坂選手は、日本人の母とハイチ人の父の間に、大阪市で生まれました。BBCも詳しく報じていますが、これまで日本の漫画で白人と日本人の間に生まれた人以外が主人公になることは「rare」(めずらしい)だという点が、海外メディアの関心を集めています。
その実力でテニス界の「ガラスの天井」を破っただけではなく、「日本の文化や表現上の改革(leading a cultural and representation revolution)もリードする存在だ」と表した米メディアもありました。
大坂選手をモデルとしたキャラクターが、褐色の肌で描かれていることも「ニュース」だと捉えられています。過去に食品会社の広告で大坂選手が漫画キャラクターとして描かれた時は、実際よりも肌の色を白めに、髪の色を明るめにして世間の批判を浴びました。
「日本で高い人気を誇る一方、激しい人種差別の対象にもなっている(BBC)」大坂選手が、「ありのまま」の姿で少女漫画の主人公になる――。最近話題になっているNIKEの広告もそうですが、日本人の差別意識に関心が寄せられていることがわかります。海外メディアの視点から学ぶことが多いと、あらためて気づかされました。