Java化、BaaS、APIへ進め
多くの地域金融機関では、大型のホストコンピューターと専用線を使い、1959年に米国で事務処理用に開発されたCOBOL(コボル)やPL/1などの古典的なプログラミング言語を用いながら、「その周りに『デジタル化といった新しい課題への回答』を何とか飾り付けられないかと苦労しているのが現状」(小俣さん)。こうした中でデジタルバンキングを実現するためには、まず伝統的なシステム基盤を、OSに依存しないクロスプラットフォームである言語、Java(ジャバ)によるデジタル基盤(オープンシステム)に変えなければならない。
閉じたバンキング・システムではなく、ネット経済のバリューチェーンの中で金融処理を担えるシステムを備えなければならないからだ。
ホワイトラベルバンキング(OEM=Original Equipment Manufacturing=ソフトウエアを使って金融サービスを提供すること)によるシステムをウェブサーバーに移行したうえ、運用をクラウド化すればコスト削減と人材の有効活用の幅が広がる。
Javaを使うことで銀行固有の機能の周辺に、ローンや保険、証券などをカバーする戦略的エコシステム(ビジネスパートナーとの協業など、共存共栄の仕組み)の構築の足掛かりとなり、ネットを通じた「顧客のくらしの手伝い」や、たとえば地元商店街の仮想化もできるだろう。また、給与計算や経費精算、請求書発行、資金繰り、マイクロファイナンスなどの企業経営アプリを創り出し、新たな手数料(役務費)の収入源にもなる。
近い将来実現するとみられるデジタルマネーによる給与振り込みでは、スマートフォンのデジタルウオレットが振り込み先になる。つまり、デジタルウオレットが「第2の普通預金」となるわけで、金融機関の「真のデジタル化」は待ったなしなのだ。
このような先進的な銀行サービスであるBaaS(サービスとしてのバンキング、Banking as a Service)事業が加わっていくことで、「新しい金融機関」に転換する可能性が広がる。
米国では、アマゾンやグーグルなどGAFAの銀行業務のバックエンドとして投資銀行や信用金庫(Credit Union)がBaaSで提携しているが、こうしたIT企業やフィンテック企業、埋め込まれた金融サービスを提供したい一般企業との提携が金融機関のBaaS事業の好例だ。