「大山鳴動して鼠一匹」とはこのことか――。2020年12月1日夕方。テレビのニュース速報に、
「菅義偉総理と小池百合子東京都知事が緊急会談へ。GoToトラベルの東京都除外が話題か?」
というテロップが流れ、メディアが沸き立った。犬猿の仲だった2人のトップ会談。第3波の感染拡大の対策として、どんな協議が行われたのか。しかし、ふたを開けると、
「65歳以上の高齢者と基礎疾患を持つ人の自粛を要請する」
という抜本的対策とはほど遠い内容だった。なぜこんな茶番劇になってしまったのか。ネット上では「2人のやったふりパフォーマンス」という怒りの声が殺到している。
「菅さん、ここが勝負の3週間じゃなかったのか!」
ネットではどんな意見が多いのだろうか。ヤフーニュースの「みんなの意見」で、「自身が居住する都道府県、GoToトラベルから除外するべき?」とアンケート調査をすると、12月2日9時30分現在で13万4960人が投票し、「除外するべき」(76%)、「除外するべきでない」(21%)、「どちらとも言えない・わからない」(3%)と4人に3人が「GoToトラベルから除外するべき」という意見だった。
こんな意見があふれている。
「テレビで菅総理の会見の様子を見たが、何か都知事から要請を出させたという、勝ち誇ったような薄ら笑いをしながら喋っている感じがした。よほど気分が良かったのかな」
「菅さん、ここが勝負の3週間じゃなかったのか! なんで自粛呼びかけだけなのさ。しかも高齢者と基礎疾患のある人にだけ。家庭内感染が多いと言っているんだから全員止めなきゃ意味がない。ふだんから発信している内容とここでやっていることの辻褄が全然あっていないよ。菅さん、あんた自分で立てたGoToの旗を降ろすのも嫌だし、間違いを認めるのも嫌だし、意固地になっているだけなのか? 来年の選挙のために少しでも経済を回して有利にしたいだけなのか? GoTo も恩恵のある業界に偏りがあるし、税金の使い方として問題があるとは思わないのか?」
「『もはや個人の努力の段階は過ぎた』とまで尾見茂会長が発言しているのに、政府のこの亀のごとき対応の遅さ。感染拡大を止める気が最初からないのではないか。かたや病院はコロナ患者を受け入れれば受け入れるほど赤字になり、ボーナスも出ず、離職者も増え、修羅の場となっています。新型コロナ対応にあたる医療従事者の実に13%が『中等度以上の鬱症状』を抱えていると報道されました。疲弊しきった医療現場に第3波のピークがこれから来るときに、緊急事態宣言どころかGoToを全面停止できない政権。ある意味すごいです」
「東京着と東京発ではまったく意味が異なる。東京から大阪に行くのならどっちもどっちだと思う。両方とも感染者が多いから繁華街に行くのとリスクは変わらない。しかし東京発の場合は地方に感染を広げるから、高齢者より、無症状感染者の多い若者が旅行に行くほうが危険だ。一方、東京着の場合は無症状感染者の多い場所に来るのであるから、地方から来た年寄りの方が危険になる。一律的に年寄りとか若者とかくくること自体かなりおかしな考え方だ。結局、年寄り(=国民)の安全を考えている振りをしているだけで、じつは何も考えてはいないのだ」
「基礎疾患がある家族がいるので、GoTOを使用する予定はありませんし、もともと控えています。そこじゃない! うちで控えても、子どもも学校に行くし、夫も仕事に行くし、周りがうつれば、結局基礎疾患がある、お年寄りがいる家庭に入り込むのです。なので、そこのみの自粛は意味がありません」
「高齢者が密になってワチャワチャ騒いでいる」
もっとも、「高齢者らの自粛」の呼びかけに「賛成」という意見も少なくなかった。
「高血圧とか高脂血症とか、基礎疾患を持っている高齢者ならふつうにいるし、高齢者のGoTo利用は非常に多いですよ。現役世代は減収失職でも高齢者の年金は一銭も減らないから。観光地に行くと、杖をついて歩いている人が結構いますよ」
「やっとまともな自粛呼びかけが出ましたね。高齢者の皆様は、全面的に自粛生活をしてくださいというのが本旨です。今までは、高齢者を守るために、現役世代が自粛を強いられてきました。経済を回す現役世代はふつうに生活するべきだと思います。全世代一律での自粛はナンセンス」
「少なくとも、今まで高齢者を自由にさせすぎていましたから、これはいい発言だと思います。トラベルもイートも商店街も、高齢者が密になってワチャワチャ大声で喋っていますもの。今回これだけ医療の逼迫がいわれているのは、高齢者が罹患しているからです。高齢者を守ろう! というなら本人たちが自粛するのが一番なのに、自ら3密に飛び込んでいっているのですから呆れていました。そのせいで経済までもが逼迫して、いい迷惑ですよ」
(福田和郎)