2020年の東京の「社会増」は10万人前後にとどまる
その後の東京都および東京23区は、一たん翌6月に「転入超過」となったものの、7月以降は3か月連続で再び「転出超過」となっています。しかも転出超過者は東京都で2000人から4000人程度に増加する傾向にあり、周辺3県を含む首都圏全域でも9月は4,201人の転出超過を記録しました。
これまで全国から人が集まる場所、それが都心であり東京であり首都圏だったのですが、その東京で人口の社会減が発生しているのです。
テレワークの進捗や一時的に避難する目的で東京を離れる人もいれば、新型コロナウイルスの影響で仕事を失い実家や地元に戻る人もいるわけですから、コロナの感染状況が終息に向かわず長期化すればするほど、東京および首都圏からの人口流出は続くとみておくべきでしょう。
例年、首都圏では15万人から多い年では20万人もの「転入超過」が発生していたのですが、現状の数値を見る限り2020年は10万人前後にとどまるものと推測されます。それでも転入超過であることにはやや驚きを隠せませんが。
同様の状況は海外でも発生する可能性が高まっています。
アメリカでは10月上旬に実施したアンケート調査(※1)で、推計1400万人~2300万人が都市部からの移住を検討しているとされています(サンプル調査のためブレが大きいです)。
アメリカでも日本同様にテレワークが進み、都市部に住み続ける理由が希薄になったというのが大きな理由です。また、カリフォルニア州から移住を検討する人は前年同期比62%増の約5万3000人に達し、ニューヨーク州では約4万7000人が州外への移動を検討しており(前年同期比34%増)、温暖なフロリダ州への移住希望者が約2万2000人いるとの結果も公表されています(※2)。
※1参考リンク:「Economist Report: Remote Workers on the Move」
※2参考リンク:「New York's Loss is Florida's Gain: Redfin.Com Users Leaving Expensive States Picks Up With Pandemic」
洋の東西を問わず、コロナ禍は人口密度が高く経済活動によって人が頻繁に移動し、密接に連携する都市部で集中的に発生し拡大しています。そういうエリアから逃れて少しでも安心して生活できるところに転居しようと考える人が増えるのは当然のことと言えます。
筆者が所属するLIFULLが9月に公表した「緊急実施! コロナ禍での借りて住みたい街ランキング首都圏版」(※3)では、1位が神奈川県央部の「本厚木」となり、4年連続不動の1位だった「池袋」が5位に後退するという現象も起きています。
11月中旬から国内でもコロナの新規感染者数が再び顕著な増加傾向を示しており、感染者の多い都市部から少ない郊外方面への人の移動は今後確実に進むものと考えられます。それに伴って住むところだけでなく、生活スタイル、仕事や学校なども変わる可能性があります。人の移動から見えてくる住宅市場の変化を機敏に捉えることが求められるのが、「Withコロナの住宅市場」ということになるのでしょう。
※3参考リンク:「緊急実施! コロナ禍での借りて住みたい街ランキング(首都圏版)」
(中山登志朗)