新型コロナウイルス「第3波」の襲来で、感染拡大の歯止めがかからない。新規感染者数だけでなく、死亡者と重症者が過去最多ペースで増加しているのが特徴だ。
そんななか、GoToキャンペーンを継続して経済活動を優先しようとする政府と、一時停止して感染拡大防止を優先させるべきだとする政府の感染症対策分科会(尾身茂会長)の「暗闘」が明るみに出た。
いったいどうなっているのか? 両者が争っている場合だろうか? 主要メディアの報道で読み解くと――。
産経新聞社説が6段ぶち抜きで菅首相を糾弾
「政府VS分科会」の対立に、主要紙の中で一番業を煮やして、厳しく菅義偉首相を糾弾する論陣を張っているのは産経新聞である。2020年11月28日付「主張」(社説)では、ふだんは2つのテーマを取り上げるのに、「感染拡大深刻化 政府の強い意思を示せ 『トラベル』さらに見直しを」と1つに絞って6段ぶち抜きでこう書いた。
「菅首相は11月27日、『この3週間が極めて重要な時期だ』と強調したが、言葉の危機感に政策が追いついていない。『国民の皆さんには、マスク着用、手洗い、3密の回避という基本的な対策に協力いただきたい』と呼びかけた。これはただの『お願い』であり、強い危機感が伝わらない」
「分科会の尾身茂会長は『人々の個人の努力に頼るステージは過ぎた。飲食店の営業時間の短縮、感染各地域とそうでない地域の行き来を控えるのは必須だ』と強調した。GoToトラベルを念頭に置いた発言だ。政府と分科会の危機意識には、明らかに差異がある。トラベル事業の対応が重要なのは、それが国民への政府のアナウンス、意思表示になるからだ」
そして、産経新聞「主張」は、政府には分科会が訴えている危機意識がまったく感じられないとして、こう続ける。
「国が(GoToトラベルによって)人の移動のお墨付きを与えているから、外出や旅行を控える必要はあるまい。さらに、ここが正念場といわれても実際にはたいしたことはないだろう――。このように受け取られてきた。日本医師会の中川俊男会長は『国が人の移動を推進することで、国民が完全に緩んでいる』と指摘している」
「分科会はすでにステージ3相当の地域が複数あると指摘し、札幌市、東京23区、名古屋市、大阪市を例示している。事態は深刻だ。(政府と東京都は)互いに判断を押しつけ合っているようにしか見えない。これで危機感の共有を呼び掛けることができるのか。菅首相は、政策による強いメッセージを適宜出し続ける必要がある。政府と自治体、分科会との間から不協和音が漏れ聞こえる現状は、決して満足のいくものとはいえない」
と結んでいる。