リーディングカンパニーだからやり続けるPR活動
白鶴酒造の社会貢献(CSR)活動のもう一つの柱ともいえるのが、酒造りの基本である米(山田錦)づくりへの支援だ。年々、農業従事者の減少が進むなか、5年前に「白鶴ファーム」を立ち上げ、米作りの担い手の育成に着手するとともに、育成技術や土地づくりやそのノウハウを蓄積、研究・開発。これは、SDGsの「飢餓をなくす(17の目標の2)」取り組みに通じている。
「そもそも、清酒産業は環境にやさしい産業でした。たとえば米からはもみ殻や藁が出ますが、昔は断熱材として使っていましたし、糠は赤糠からは油、白糠からはお菓子が作れます。そこから、酒を造ります。米づくりには『村米制度』という山田錦の作る地域と栽培米の契約を結んでいます。灘の清酒産業は地域とWinWinの関係を構築してきました。
商品化後も、回収して使う一升ビンはリサイクルの優等生ですし、現在の紙パックも再資源化できるよう、日々の技術開発に力を入れています。今、世界的にSDGsが叫ばれていますが、清酒産業はそれを意識せずに取り組んできたわけです」
西村さんはそう説明して、胸を張る。
コロナ禍で行き来が難しくなってしまったものの、海外では空前の和食ブームが続いている。「日本酒(清酒)は、外国人からリスペクトされる存在で、その背景には和食の歴史と伝統、文化があります」と、西村さんは話す。
その波に乗って、「SAKE」は海外市場で売り上げを伸ばしている。白鶴酒造も約40年かけて、世界50か国で直接販売している。「まる」も好調の一品だ。
西村さんは、こう説明する。
「最近は地方の地酒が(海外に)進出していますが、白鶴は『SAKE』の安心、安全のナショナルブランドとして、また日本酒文化、和食文化を広く知ってもらうPR活動を担う役割をもっていると考えています。
清酒業界全体で、どのように『SAKE』を広く知らしめていくかという課題は、体力が伴わなければできないことです。純米吟醸酒ばかりでない、多くの商品群をもっている白鶴と、地方の蔵との違いです。『SAKE』を発信し、『SAKE』文化を底上げする役割を、リーディングカンパニーである白鶴が担っていかなければならないと自負しています」