超ロンググランCMに込めた漁港への思い
「白鶴 まる」の発売は、丸選手が生まれる5年前の1984年のこと。西村さんは、
「当時は日本酒ブームで、主に純米吟醸が支持されていました。そうした中で「まる」は、コストパフォーマンスの良い商品として知られるようになり、当社でも味わいと価格を訴求していこうと、マスメディアへの露出を増やしていった時期でした」
と、振り返る。
それ以来、「まる」のテレビCMは、今もなお続いている。なかでも、日本全国の漁港を訪ねるCMは超ロングラン。誰もが一度は目にしたことがあるはずだ。
清酒によく合うあてといえば、やはり魚。「清酒との相性の良い魚料理を楽しく、非日常のシーンの中で『まる』をアピールできる場所として漁港を舞台に撮影しました」と、西村さん。地元でしか味わえない、おいしい漁師料理と「まる」との相性の良さに加えて、漁師やその家族、漁業関係者の方々との和気藹々で酒を酌み交わすシーンに、手で輪っかをつくる「まる」の決めポーズがウケて、北は北海道から、南は九州まで全国十数か所の漁港を巡る人気CMに。なかには、「うちに来て」とオファーが来ることも少なくなかったという。
漁港のすがたをありのまま伝えたことで、消費者もテレビCMを通じて津々浦々の漁港を訪ねた気分にもなれるのもよかった。
テレビCMで紹介された、西村さんの印象深い漁師料理に「鮭のちゃんちゃん焼き」がある。「漁師らしい豪快な料理で、自宅に帰ってから、ちょっとした飲み会の場で作ってみたんですけど、おいしくて好評でした。会社にも『どうやって作るんだ』『どこへ行けば食べれるんだ』と問い合わせが相次いで、気づいたら街の居酒屋さんのメニューになっていたんですね。CM効果かどうかはわかりませんが、地場の魚料理を広められたことはうれしかったですね」と、目を細める。
実際に「まる」の売り上げにも大いに貢献。ここ数年は日本酒全体の売り上げが減少傾向にあるが、「まる」の売り上げは好調を維持。コロナ禍の今年も、家飲み効果も手伝って上向きだ。