党が法の上位にある
本書の後半は、公法に充てられている。公権力の行使を法によって統制し、市民の権利と自由を保障する立憲主義の憲法とはまったく類型の異なる中国憲法。公安権力などの行政権力、検察権力、そして法院までもが、「国家・社会・集団の利益」の実体をなす「党の指導」を護持するため、市民の自由に容赦なく「切り込んで」いくことを保障するのが、中国の憲法なのだ。まったくベクトルが違う憲法と言わざるを得ない。
さらに刑法が30年もなかったこと、「裏」の法が存在すること、法院には独立性が欠けており、行政機関と理解した方がいいことなどが述べられている。
法の支配の確立を妨げている最大のネックが、国法に対する党規(党紀)優位の構造である。2020年6月30日、香港国家安全維持法が制定、即日施行された。法律の上位に党機関の決定が存在するという「党規国法」の体系が、直接、香港にもかぶさってくることになったのだ。中国が、「一国二制度」から「一国一制度」に踏み出した日として長く記憶されるだろう。
「中国法」
小口彦太著
集英社
860円(税別)