新型コロナウイルスの感染拡大が、賃上げを阻んだ。厚生労働省の「2020年 賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、2020年中に賃上げした企業(見込みを含む)の割合は81.5%で、前年(90.2%)より8.7ポイント低下した。
新型コロナウイルスの感染拡大で、宿泊・飲食サービス業などが直撃を受けたことなどが影響して、賃上げを実施した企業は9年ぶりに減少した。一方、賃金改定を実施しない企業は9.5%(前年は5.4%)、引き下げた企業は2.1%(前年は0.0%)と急増した。
これから、もっと厳しくなる?
賃上げを実施した企業の割合が80%程度にとどまったのは、2013年(79.8%)以来のこと。下落幅はリーマン・ショック直後の09年(61.7%)に、08年(74.0%)から12.3ポイント低下して以来の大きさだった。
賃上げ企業の割合は、14年83.6%となって以降、毎年80%台を小刻みに上昇し、19年に初めて90%を超えたところだった。
賃上げ実態を産業別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道業」では賃上げ企業は95.4%(前年100%)でトップ。次いで「建設業」の95.0%(同100%)。
賃下げ実施の割合は、「運輸業、郵便業」(7.8%、前年値なし)、「宿泊、飲食サービス業」(7.5%、同)で高かった。
賃金改定なしでは「生活関連サービス業、娯楽業」が20.9%(前年3.2%)と高くなっている。
コロナ禍が直撃した「宿泊、飲食サービス業」の賃上げ企業の割合は、前年から30.6ポイント低下し49.3%で、産業別で最も低かった。
「1人平均賃金の改定額」は4940円(前年5592円)。賃上げを実施した企業のみについてみると、5423円(同5851円)。賃下げ実施の企業のみでは、マイナス6219円(同マイナス7040円)だった。
改定を決める際に重視した要素は「業績」(49.0%、前年50.0%)でトップ。次いで、「雇用維持」(8.0%、前年6.5%)、「労働力の確保・定着」(8.0%、前年9.9%)で並んだ。
一般的に、企業は前年業績を踏まえて賃金改定を行うため、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が、賃金改定で本格化するのはこれからとみられる。
なお調査は、毎年7、8月に実施。今年は7月20日~8月10日に、厚労省が調査票を企業へ郵送。企業は郵送または専用のオンライン報告方式で提出した。
対象の企業は「製造業」と「卸売業、小売業」は常用労働者30人以上、その他の産業については常用労働者100人以上を雇用する企業から抽出し、1868社から有効回答を得た。
11月25日に発表した概況は、このうち常用労働者100 人以上の1670 社について集計した。