与党の女性幹部も「開かれた韓国社会」に貢献と絶賛
というのは、韓国の制度では未婚の女性が精子提供を受けることは、違法ではないが、事実上非常に難しいからだった。
その辺の事情を朝鮮日報(11月19日付)「福祉部『藤田小百合さんのような非婚女性の体外受精、韓国国内でも違法ではない』 大韓産婦人科学会では『精子提供受けた手術、法的な夫婦のみ対象に実施』」が、こう伝える。
「サユリさん(41)の『非婚出産』について、保健福祉部(編集部注:日本の厚生労働省に該当)が『韓国において非婚状態で精子の提供を受け、妊娠するのは違法ではない』との見解を示した。保健福祉部によると、体外受精手術時、配偶者がいる場合に配偶者の書面による同意を得るよう規定しているだけで、配偶者がいない場合は書面による同意が必要ない。金銭目的で卵子や精子の提供を受けてはならないという法令に違反しなければ、非婚者の体外受精は違法でないということだ」
ただし、こうした法的な問題とは別に、大韓産婦人科学会はガイドラインで「精子提供手術は、原則的に法律的な婚姻関係にある夫婦のみを対象に実施する」と定めている。法令では、非婚女性のための手術を制限してはいないが、明らかに保護もしていない。韓国の非婚女性にとって体外受精で妊娠することは、事実上、非常に難しいのが現状だった。
このため、サユリさんの行動を称賛する声が、文在寅大統領の与党「共に民主党」の女性幹部たちからも巻き起こった。聯合ニュース(2020年11月17日付)「韓国で活動の日本人タレントが非婚出産 与党幹部も祝福」が、こう伝える。
「共に民主党の韓貞愛(ハン・ジョンエ)政策委員会議長は11月17日の国会院内対策会議でサユリさんが精子提供を受けて出産したことを祝福した。韓氏は、サユリさんが選択的シングルマザーになったとし、『サユリさんの子どもが育つことになる大韓民国がさらに開かれた社会になるよう、皆がともに努力しなければならない。国会がその役割を果たす』と述べた」
日本で女性タレントが体外受精で出産してもここまで話題にはならないだろう。しかし、サユリさんの勇気ある行動が韓国女性を勇気づけたのは確かだ。
(福田和郎)