新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、新しい生活様式に合わせて、スーパーマーケット業界では、実店舗とインターネットを使ったビジネスとの融合への動きが急だ。
ネット通販などを展開する楽天は、スーパー大手の西友に出資。ネットスーパー事業を強化する一方、西友がオンライン・オフラインの垣根のない先進的小売企業になるよう目指すと宣言。また、ライフコーポレーションは従来のオンライン販売に加えて、新たにアマゾンに出店して生鮮食品などを売り出した。
楽天、小売りのDX推進を支援
西友は2002年に米ウォルマートと業務提携を交わし、2008年に完全子会社化された。その西友に、楽天が20%を出資。米資産運用会社KKRが65%、ウォルマートの持ち分を15%として、あらたな体制で運営することになった。3社が2020年11月16日に発表した。
新体制で西友が目指すのは「オンラインとオフラインを融合した利便性の強化」。ネットとリアルの購買データを合わせることで、個別化した商品情報が提供できるようになる。顧客はさらに便利さを感じ、店舗側は顧客を取り込みやすくなる。
オンラインとオフライン、ネットとリアルを融合した小売業者は「OMOリテーラー」と呼ばれる。OMOは「Online Merges with Offline(オフラインと融合するオンライン)」の略。オンラインとオフラインに垣根を設けず、融合したひとつのマーケットとして捉える考え方。米国や中国のほか、世界各国でトレンドとなりつつあるリテールマーケティングの概念という。
3社は新体制の発表で、西友を「日本を代表するOMOリテーラーとなるための取り組みを後押しする」と述べた。
たとえば、ある商品の売り場で、実際に品物を見て気に入った場合に、スマートフォンでその消費のタグをスキャンすると通販サイトにアクセスし、そのまま購入できる―― などのサービスを備えることができる。商品の持ち帰りを希望する場合には、店を出るときにカウンターでピックアップすることも可能だ。
楽天は新会社「楽天DXソリューション」(仮名)を設立。同社を通じて、楽天が保有する1億以上の会員基盤やテクノロジーを活用して、新たな小売りの手法を開発する意向を表明。西友にとどまらず、国内小売業を通して小売りのデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を支援するという。
ライフはアマゾンで生鮮販売、「店頭受取便」も
スーパー「ライフ」を展開するライフコーポレーションは、アマゾンと組んで新たなネット戦略に乗り出している。10月21日、アマゾンのプライム会員向けサービスに、地域限定ながら、ライフのストアを開設して生鮮食品や惣菜を売り出した。
ライフはこれまで、専用アプリから注文するアマゾンのサービスで食品・日用品などを最短2時間で届けるビジネスで、配送エリアの拡大に取り組んでいた。
生鮮食品は実際に見て、手にとって選んで買う傾向が強く、ネットを通じた購入は産直品など一部に限られ浸透してこなかった。ところが、コロナ禍でこの傾向が一転。スーパー各社とも月を追って前年を上回るようになったという。
また、同社では11月16日から、ネットスーパーで注文した商品を店頭で受け取れる「店頭受取便」のサービスを開始。コロナ禍でネットスーパーへのニーズが高まるなか、配達便の到着待ちやレジ待ちをせず、商品を受け取りたいという要望に応えるようにした。
市場調査の富士経済によると、2020年のネットスーパーの市場規模は、前年比11.2%増の2625億円の見込み。21年は19年と比べて19.5%増の2820億円に拡大すると予測する。
富士経済では拡大の要因について、生鮮食品などをネットを通じて手軽に注文できることに対して評価が高まってきたこと、ネットスーパーを展開する企業が顧客の囲い込みを目的に注力していることなどを挙げている。