新型コロナウイルスの「第3波」が猛威を振るうなか、政府は2020年11月24日、日本医師会などから感染拡大の元凶と指摘されている「Go Toトラベル」をめぐり、感染拡大地域の新規予約を一時停止すると発表した。
国民の批判を受け、かたくなに「Go To事業のキャンペーンを続ける」としてきた強硬姿勢を一転させた。いったい何があったのか。主要紙の論調とネットの声を拾うと――。
コロナの収束、最も楽観的な予想でも来年8~9月
その「決意」に疑問を投げかけるのが毎日新聞(11月23日付)の「コラム:風知草 勝つと思うな」である。コラムニストの山田孝男・特別編集委員が、11月8日に放送されたNHK「新型コロナ 全論文解読~AIで迫る、今知りたいこと~」の内容を紹介しながら、「新型コロナに勝つのは無理だ」と、こう書いている。
「新型コロナは一体、いつ収束するのか。NHKが世界トップクラスの研究者14人に聞いたところ、最も楽観的な予測は2021年8~9月。21年末から22年という見方に加え『23年以降』説も。最も悲観的な予測は『収束しない』だった」
番組の中で、沖縄県中部病院の感染症医、高山義浩氏が新型コロナウイルスの70歳以上の致死率は12%で、高齢者の死亡リスクはインフルエンザの数十倍に達すると報告した。毎日新聞の山田孝男記者は、米国の2つの製薬会社がワクチン開発に成功している、新型コロナは撲滅できるのかと、高山義浩医師に取材した。
すると、答えはこうだった。
「無理でしょう。天然痘を撲滅できたのはヒトだけの感染症だったから。新型コロナウイルスは動物にも感染する。仮に極めて有効なワクチンが開発され、全人類が接種できても、次に動物に接種しなければならない。途方もないオペレーションです。麻疹(はしか)は一度感染すれば生涯免疫が手に入るが、新型コロナは再感染している。ワクチンを接種しても再感染すると思ったほうがいい。人間はすでに4種の季節性コロナウイルス(冬カゼのウイルス)と共存している。新型コロナとも共存するしかない」
Go Toのような恩恵を受けない業種がたくさんある
ネット上では、こんな意見があふれている。まず、航空&旅行アナリストで帝京大学非常勤講師の鳥海高太朗氏がこう投稿した。
「地方の宿泊施設や観光関連産業から聞かれるのは、Go Toトラベルがなければ廃業に追い込まれており、感謝しているという声だ。ただ、感染拡大時の一時停止はやむなしという声も聞かれる。2月以降のGo Toトラベルの延長も議論されているが、一時停止になった分は後ろ倒しにすることで、感染者が少なくなった時期にGo Toトラベルの恩恵が受けられるようにして欲しいという声が多い。また、地域共通クーポンによる地方経済への効果も大きく、感染者が多いエリアをピンポイントでGo Toトラベル&イートの一時停止を議論すべきだろう」
Go Toの恩恵を直接受けない人からは、こんな声が多かった。
「一部の飲食店や観光業界は、まだ政府が肩入れしてくれただけでもよかったよ。製造業ですがGoToの恩恵なんかまったくなく、もうダメかもしれません。せめて納税者を全般的気救う対策をしてほしかったですね。所得税、住民税、健康保険税、個人事業税、法人税...。こういうのを免除とか減免してもらえるだけでも助かるのに。健康保険税の減免はありますが、当方一括納付したため却下されました」
「主人は製造系の営業ですが、コロナの影響で先月末で解雇されました。うちはまだ夫婦だけですが、同じく解雇された他の方々は、みなさんお子さんもいらっしゃって...大変だと思います」
「飲食業はまだよいほう。知人が娯楽趣味系の講師をしているけど、今のご時世そんなこと二の次だし、国から給付金の100万円、ものすごく感謝していたけどそれだけ。コロナ以降の収入9か月で9万円。月収1万円。10年以上続けたのに今年一杯で廃業します」
一方で、飲食・観光業だけ恩恵を受けたという意見には、こうした批判も。
「観光や飲食店の後ろに農業や漁業があるのですよ。それは地方経済そのものです。昨年末から影響が出ている。そのへんをきちんと報道しないと、特定の業種だけ批判しても、裾野(すその)があると言うことを認識するべきです!」
「ホテル・旅館・交通関係や規模の大きい飲食などは、建物や車両・施設など固定資産が大きく、雇用数も大。そのようなところは廃業すれば大量の失業者を生むし、固定資産が重荷になり業種転換もままならない。Go Toにはそれなりの意味があるのです」
こうした意見に対しては、逆にこんな反論もあった。
「製造業だって同じですよ。ダメになると下請け、孫請け、取引先の運送業も引っ張られます。つぶれなくても製造業の給料が減ったら土日のレジャーが減るから、地域のスポーツ量販店の売り上げも落ちます。裾野があるのは、飲食・観光だけではありません!」
Go Toで自腹を切って飲食、旅行をする気持ちが失われた
また、飲食・観光の一部の感染安全対策を、疑問視する声も少なくなかった。
「バスツアーで、カラオケ大会をやるような危機管理じゃダメだよ。本当に生き残りたいなら、なぜちんと対策しないの?居酒屋にしても、テーブル数を減らしたり、ビニールカーテン吊って半個室にしたり、サーキュレーターたくさん設置したり。やっていない所がほとんどだよね。なのに、レインボーステッカー貼っている。しっかり対策しているお店にとって、本当に迷惑な話だと思う」
「きちんと対策をして安心できるお店にはGo Toに関係なく行きますよ。元々その料金で満足していたわけだから。問題は感染対策をないがしろにしながら国が助けてくれないと潰れると嘆き節だけの店。どちらにしても早晩潰れるだろうね。客も馬鹿じゃないからね。そのへんはしっかり見ていますよ」
今回の一時停止措置が感染防止につながるか、疑問視の声が多かった。
「別に、飲食や移動、観光の規制をするわけではない。税金での観光や飲食が出来なくなるだけで、普段に戻るだけです。観光や飲食は自腹で行うのは当たり前だと思います。なぜGOTO止めたからっと言って、それが観光制限みたいに捉えているのかが意味不明」
「なんか、私たちの心に割引の恩恵を得られるのが当たり前になってきている気がする。さもしい人間になってしまった。Go Toやめるのなら観光業に補償もして欲しいって、補償ありきで経営するのは如何なものか? まったく援助のない業界で苦しむ人がたくさんいるのに」
「Go Toなんてさっさとやめてくれたほうが、客層が元に戻って旅行しやすくなります。安かろう、悪かろうは、人間にも当てはまると痛感しました」
(福田和郎)