専門家の諫言「東京五輪が危ない」に態度を翻した菅首相
それにしても政府はなぜ一夜でGo Toキャンペーンの見直しに転換したのか。そこには「何が何でも東京五輪・パラリンピックを開催しなくてはならない」とう切羽詰まった思惑があったと、各紙が指摘する。
朝日新聞(11月22日付)「Go To一夜で急転 政府、分科会の危機感受け」が内幕を、こう描写する。
「背景にあったのは医療崩壊への危機感だ。『ある患者の気管挿管が終わると、すぐ次の患者に措置する状況だ』。20日の分科会の前、逼迫した医療現場の実態が次々と寄せられた。あるメンバーが西村康稔経済再生担当大臣に分科会としての危機感を伝達した。しかし、首相官邸側にGo Toに手を付ける対策強化の様子はうかがえなかった」「ここで感染拡大を抑え込まなければ、来夏の東京五輪の開催にも影響が出る。(そうなると)経済への打撃も深刻になる――。業を煮やしたメンバーは、首相が最重視する東京大会へのそんな見方を伝えた。政府は20日夜から急きょ対応に動いた。官邸幹部は『あれだけ専門家から言われたら無視できない』と話す」
医療専門家からの「東京五輪が開けなくなるぞ」という言葉が効いたわけだ。
東京新聞(11月22日付)「Go To一時停止 感染と経済、苦渋の選択」も、菅首相の頭にあるのは国民の健康よりも常に「東京五輪」だとして、こう報じる。
「首相の視線の先にあるのが、来夏の東京五輪・パラリンピックだ。政府高官は『引き締めに軸足を置いてばかりいては、五輪に向けた機運も盛り上がらない』と危機感を隠さない。ただ、ここで感染封じ込めに打開策を講じなければ、首相が国際公約した『安全、安心な五輪』は、おぼつかなくなる。ジレンマは深くなるばかりだ」
確かに、菅首相はバッハIOC(国際オリンピック委員会)会長が来日したおり、
「人類がウイルスに打ち勝った証しとして、東京五輪・パラリンピック大会を開く」
と、決意表明したばかりだった。
(福田和郎)