新型コロナウイルスの「第3波」が猛威を振るうなか、政府は2020年11月24日、日本医師会などから感染拡大の元凶と指摘されている「Go Toトラベル」をめぐり、感染拡大地域の新規予約を一時停止すると発表した。
国民の批判を受け、かたくなに「Go To事業のキャンペーンを続ける」としてきた強硬姿勢を一転させた。いったい何があったのか。主要紙の論調とネットの声を拾うと――。
産経新聞まで「首相は自分の言葉で国民に語りかけろ」と酷評
赤羽一嘉国土交通相は2020年11月24日、新型コロナウイルスの感染拡大抑止策として、「Go Toトラベル」について、感染拡大地域を目的地とする旅行を一時停止すると発表した。主要メディアの報道によると、ポイントは次の3つだ。
(1)感染拡大地域を目的地とする新規の予約に加えて、既存の予約分についても割引の対象から外す。
(2)旅行を取りやめた場合のキャンセル料は、利用者に解約料の負担がかからないようにする。キャンセルで影響を受ける事業者には、国が旅行代金の35%を補填(ほてん)する。
(3)一時停止の対象地域については国と都道府県でよく協議して判断する。
これを受けて11月24日、大阪府の吉村洋文知事が大阪市をGo Toトラベルの対象から外すと発表。北海道の鈴木直道知事も感染が爆発的に広がっている札幌市を対象から外す方向で検討していると表明した。
西村康稔経済担相は同日午後、知事らの意向を踏まえて、大阪市と札幌市を11月24日から12月15日までの3週間、新規予約を一時停止すると発表した。
しかし、最大の感染地域である東京都の小池百合子都知事は、こうした政府の動きにそっぽを向いたままだ。今年7月のGo Toトラベルのスタート時に東京都が一方的に外された怨念がまだ残っているのか、11月23日、「10月1日に(トラベルに)東京が加わったのも国が主体的に決めた。今回もしっかり国のほうで判断してほしいし、それが責任だと思う」と記者団に述べ、「国は責任を地方に丸投げするな」とばかりにクギを刺した。
それにしても政府の迷走ぶりはお粗末だった。Go Toキャンペーン事業については、11月21日~23日の3連休前に、日本医師会の中川俊男会長が、
「感染拡大のきっかけになっているのは間違いない。『我慢の3連休にしてほしい』」
と強く呼びかけたが、政府は冷笑していた。
産経新聞(11月22日付)「Go To見直し 感染急増ようやく転換」は政府の態度を、こう伝える。
「『医師会の態度は理解するが、彼らは全体を見ているわけではない』(政府筋)と反発する声が出た。ただ、分科会の専門家が『英断を心からお願い申し上げる』という異例の表現で見直しを求めるにおよび、政府も重い腰を上げた。しかし、見直しの対象地域や時期については言葉を濁した。政府筋は『東京や大阪、愛知が抜けたら事業の意味がない』と指摘する」