このままでは日本の中小企業は滅びてしまう
菅義偉首相のブレーンで、成長戦略会議メンバーの元金融アナリストのデービッド・アトキンソン氏が「世界的に日本の生産性が低いのは、中小企業の経営者に原因がある」と指摘していることにふれ、「私たち中小企業は滅びゆく存在であるということを突きつけられているわけです」と書いている。
これに反発するのではなく、意外にも大澤氏は素直に受け止めている。米国・ラスベガスで開かれた家電見本市CESにかつて足を運び、中国や韓国のベンチャー企業の熱量の大きさに圧倒されたことがあった。
世界が変わっているのだとすれば、その流れに乗るために、経営者としてどうすればいいかと自問したという。大澤さんの会社が続けてきた廃棄物の収集・運搬は取り残されそうな業界の最たるものだと考えている。介護や教育、保育事業など新分野へ進出した背景にはそうした危機感もあったようだ。
中小企業では無理だと思われていた1日8時間労働、完全週休2日制も2020年から導入した。有給休暇の100%取得、在宅ワークの導入も始めた。2019年には、ベアを実施したため、人件費が10%上昇した。だが、やってみたら何とかなったという。中小企業だからできないと言い訳をせず、チャレンジする姿勢に感銘を受けた。
大企業のトップの言行は、しばしばメディアに登場する。だが、ふだん中小企業の経営者が何を考え、どう行動しているかは、ほとんど知る機会がない。
本書は「二代目社長の生き残り戦略」と銘打っているが、中小企業の生き残り戦略としても読むことができる。健闘を祈りたい。
「先代は教えてくれない 二代目社長の生き残り戦略」
大澤希著
合同フォレスト
1500円(税別)