社民党が2020年11月14日に臨時党大会を開き、所属する4人の国会議員のうち3人が立憲民主党に合流することが確定した。事実上の分裂である。国会議員は福島瑞穂党首のみとなるものの、直近の参院選で2%以上の得票率であるため、政党要件はギリギリ維持している。とはいえ消滅は時間の問題だろう。
55年体制の一角を担った同党が消滅するに至った事情とはなんだろう。また、それを回避するためには何をすべきだったのか。それをまとめておくのは、若い世代にとっても意義あることに違いない。
前代未聞の労働者政党によるリストラ
社民党(社会党)が凋落するきかっけとなった出来事に、北朝鮮による日本人拉致被害を長年にわたって否定し続けたことを挙げる人は少なくないだろう。筆者もその点は同感だ。特に、北朝鮮自身が事実を認めた直後の「朝まで生テレビ」を当時の社会党幹部が全員出演辞退した時は、その厚顔無恥ぶりに驚いた記憶がある。
ただ、個人的に挙げておきたいのは、やはり2005年の党職員のリストラである。衆院選で大敗した結果、当時の職員の3割ほどをリストラ(配置転換ではなくクビ切り)したものだ。
それまでさんざん民間企業のリストラや雇止めを批判しておきながら、あっさり生首を切る姿勢は、企業サイドはもちろんのこと、他の労働組合関係者からも強い批判を受けることとなった。
はっきり言えば、労働者政党としての社民党はこの瞬間に死んだと言っていいだろう。しばらく後に、テレビ朝日の番組で派遣切りについて議論した際のことだ。同党所属の辻本清美議員があんまり空理空論ばかり言うものだから筆者が「でも社民党は職員をいっぱいリストラしてるじゃないですか。なんで企業だけ批判するんですか」と生放送で言ってあげたら、金魚みたいに口をパクパクさせていた記憶がある。
危機は最大のチャンスになり得た
ただ、それは同時に、社民党が復活できる最後のチャンスでもあったように思う。たとえば、福島瑞穂代表が開き直って、こんな正論を言っていたらどうだったろう。
「政党であれ企業であれ、予算に限りのある組織が職員の人生を丸抱えすること自体に無理があるのです。仮にできたとしても、その陰には雇用調整のしわ寄せをすべて引き受けさせられる非正規雇用労働者が存在するはずです。企業は経営に専念してもらい、経営が悪化すれば解雇も認められるべきでしょう。雇用からあぶれた人は正規非正規問わず、国が面倒みるべきであり、我々社民党はそのためのセーフティネットの構築をマニフェストの第一に掲げます」
民主党や、その後継政党の支持率がいつまでたってもパッとしないのは、彼らが「労働者政党」といっても大企業の正社員のほうしか向いておらず、その他の労働者からみれば支持するメリットなど何もないことが理由だと筆者は見ている。
それ以外の選択肢を社民党が有権者に提示することができれば、ここまで落ちぶれることもなかったのではないか。
ちなみに、世界には実際にそうした選択肢をとった左派政党も存在する。1990年代以降に企業に柔軟な解雇を認めつつ、幅広い社会保障を実現して経済成長と福祉の両立を実現したスウェーデン社会党が代表だ。
もっとも、最後の党大会においてすら、「おまえのせいだ」と責任の押し付け合いに終始する老人たちを見るに、彼らがその選択肢を理解できた可能性はやはりゼロだったのだろう。(城繁幸)