北欧にみた 脱「デジタル後進国」を急がなければならいない理由とは?

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銀行にもキャッシュなし

   たとえば、わたしたちにとって最も身近なデジタル化の一つに「キャッシュレス化」がある。しかし、普及率では世界的には最も遅れているカテゴリーの一つでもある。

   その対極にいるのが、スウェーデン。国民一人ひとり、街の店舗ばかりか、露天商や屋台の店主らもキャッシュを扱わない。銀行にも現金はほとんどなく、銀行強盗が押し入っても奪うものがなく、手ぶらで引き上げる事件もあったというほどだ。

   スウェーデンは、1661年に世界で初めて銀行券(紙幣)を発行した国として知られるが、現代では世界最先端のキャッシュレス社会になっている。同国では2013年に銀行が現金の取り扱いを停止し始めたというが、当時の日本ではまだ「キャッシュレス」という言葉も一般的ではなかった。

   デジタル化を進める大きな理由の一つは合理化だ。銀行が現金の取り扱いを縮小しながらデジタル銀行へのトランスフォーメーションを推し進めると、支店網が縮小され従業員が少なくなる。大手のスカンジナビア・ エンスキルダ銀行(Skandinaviska Enskilda Banken=SEB)は1998年に1万1053人だった行員数が2019年に8013人と30%削減された。

   北欧各国では人口が多いとはいえず(スウェーデン=約1000万人。フィンランド=約550万人、エストニア=約130万人)、人材を効率的に適材適所に充てる必要がある。ある部門でデジタル化によって生じた「余剰人員」は、リカレント教育を通じて別の部門で生かされることになり、このシステムが国の生産性の向上につながる。その方法は、社会の少子高齢化が進む日本にとって大いに参考になるはずだ。

   スウェーデンをはじめ北欧各国ではまた、リカレント教育を経た人材らによるスタートアップの活動も盛ん。スウェーデンのiZettle(アイゼトル)という企業はiPhoneアプリを使ったカード読み取り端末を開発し、低コストのため零細企業で導入が相次ぎキャッシュレス化推進にひと役買い、ユニコーン企業に成長した。欧州市場、メキシコ市場に同端末が普及、このことに目を付けた米ペイパルが投資し、2018年、22億ドルで同社を買収した。

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