プーチンもサルコジも「めった斬り!」
また、前後の文脈から読み解くと「awkward」を「厄介」「付き合いにくい」「やりにくい」と訳すのは飛躍しすぎだと感じます。さらに「fellow」については、時事通信だけが「同僚」と訳していますが、これも違和感があります。鳩山氏はオバマ氏の同僚ではないですから。
各社の和訳を採点すると、合格点は朝日新聞。最も「残念な訳」は時事通信の「感じは良いが厄介な同僚」です。採点すると30点といったところでしょうか。
オバマ氏の回顧録をめぐる「誤訳騒動」は、まだまだ続きます。NHKなどの一部メディアが「オバマ氏が鳩山由紀夫元首相を『迷走した日本政治の象徴』などと評した」と伝えたことに、ネットを中心に専門家らが「誤訳」と指摘。それを朝日新聞が「NHK、オバマ回顧録を『誤訳』?」と報じて話題になっています。
原文を読み解くと、オバマ氏は鳩山氏のことを「迷走した日本政治の象徴」と評していません。あくまでも「短期間で次々と首相が交代したこと」を批判しているだけで、鳩山氏への個人攻撃だとするのは「意訳しすぎ」です。
それでも、他国のメディアはどう報じているのかと気になって調べてみたら、意外な(!)事実が判明しました。各国メディアによると、オバマ氏は回顧録の中で、かなり大胆に各国首脳についての「私見」を述べているようです。ほとんどが辛辣な批判で、ドイツのメルケル首相だけが「まじめで誠実だ」と好評価を得ていると報じられています。
実際にメディアが伝えている「各国首脳評」を見てみると、フランスの元大統領サルコジ氏については「overblown rhetoric」(仰々しいことば)だらけの人物。つまり、「大きな口をたたくが何もできない」と酷評。ロシアのプーチン氏のことは「部下や懇願者に囲まれたボスで、世界が狭い。不正や賄賂を正当な手段だとみなす輩」と、さんざんな評価です。
他にもインドやブラジル、イギリスや中国など在任中に接した各国首脳についてストレートな評価をしていると話題になっていますが、「違和感」を覚えるのは日本のリーダーへの言及の少なさです。他国の人物にはそれぞれのエピソードを紹介しながらかなりの行数を割いているにもかかわらず、日本については鳩山氏に関する「A pleasant if awkward fellow」だけ。プーチン氏やサルコジ氏への「辛辣な評価」と比べても、鳩山氏のことは「酷評」していないことがよくわかります。