コロナ禍で激減したテレビのスポットCM収入
コロナ禍によって、民放キー局の2020年5月のスポットCM収入が、前年同期比でどう変わったかにふれている。TBS 59%台、テレビ朝日 58.7%、フジテレビ 57.5%、テレビ東京64.7%、(日本テレビは執筆時未発表)。
本書刊行後の11月12日、在京民放5社の2020年9月中間決算が出そろった。コロナ禍による広告減で売上高は5社とも大幅に減り、テレビ東京ホールディングス(HD)以外の4社が減益か赤字だった。
日本テレビHDは、売上高が前年同期比16.8%減の1774億円、純損益が56億円の赤字(前年同期は136億円の黒字)。フジ・メディアHDは売上高が22.0%減の2468億円、純利益が81.2%減の54億円。テレビ朝日HDとTBSHDも減収減益。テレ東は通販が好調で、純利益は2.7倍の10億円だった。
ステイホームでテレビを見る時間が圧倒的に増えたのに、テレビに広告を打たない会社が増えたのは、「視聴者がテレビの力を信じなくなったことの表れ」と、関口さんは見ている。視聴者からメディアシフトを迫られている状況だと考えている。
テレビの将来については悲観的だ。「生まれたときからユーチューブが当たり前」世代が、10年後にコンテンツをつくり、享受する中心世代になると、「テレビ? 見たことないし家にもない」という世代が中心になると見ている。
しかし、元テレビマンだけに、テレビへの愛は深い。志村けんさんが新型コロナに感染して亡くなったあと、各局で志村さんの生前のネタ、ドリフターズ時代のコントが追悼企画として放送され、大好評だった。あれこそがテレビしかできないことと、テレビのもつ資産の大きさを指摘している。
そのうえで、「残せないものをつくる行為は、もはや時代錯誤」「番組自体を経営資源に コンテンツの2次展開、3次展開を」「系列局を生かした地方限定番組などユーチューブとの補完関係」など、さまざまな提言をしている。
テレビマンのコンテンツ制作力はすごいのに、テレビ局にマーケティング視点がないことが問題だとしている。
関口さんのポリシーは明快だ。「人が見て共感できないことをやってはいけない」。未来を示す羅針盤となるのは、「正直さ」「誠実さ」「コツコツ積み重ねる継続力」「協業」「シェア」......これまで見過ごされがちだったものに光が当たるという。そうしたメディアシフトが起こるとしたら、意外といい時代になるのではないか、と共感した。そのとき、テレビはどう対応し、変化するのか?
関口さんはこう締めくくっている。
「テレビはこれからがおもしろい! 僕は本気でそう思っています。なぜなら、今まで権力を握ってきた独裁政党が一気に崩れるところをリアルタイムで見られる予感があるから」
「メディアシフト YouTubeが「テレビ」になる日」
関口ケント著
宝島社
1500円(税別)