新型コロナウイルスの感染再拡大が懸念されるなか、インフルエンザのシーズンが到来した。同時流行を避けるため、厚生労働省は2020年10月1日から重症化しやすい65歳医上の高齢者から順次、予防接種を呼びかけている。
厚労省によると、今シーズン(2020~21年)は成人量に換算しておよそ6644万人分のインフルエンザワクチンが供給される見通し。コロナ禍にあって、例年以上に予防対策が重要だ。
そうしたなか、ワクチン接種の効果を高める、「アジュバント効果」がある食べ物が注目されている。いったい、どういうことなのか――。
コロナ禍で重視される免疫力アップ
今年8月、WHO(世界保健機関)は「今シーズンは積極的にインフルエンザの予防接種を受けることを推奨する」という声明を発表した。これはインフルエンザと新型コロナウイルスの症状が似ているため、医師の正確な診断が難しく、治療に影響が出る恐れがあるため、とされる。
現在、国内ではいち早く冬が訪れた北海道でコロナ禍の感染第3波ともいえる事態に陥り、感染者が急増。冬の足音が近づくにつれて、全国で新型コロナウイルスの感染が広がる恐れがある。それもあって、インフルエンザの予防接種が例年以上に重要になっているわけだ。
そこで注目されているのが「アジュバント効果」。日頃から免疫力を高める食べ物を摂ることが健康維持に欠かせないなか、免疫力を高める食べ物の中にはインフルエンザワクチンの効果を高める「アジュバント効果」が期待される食べ物があるというのだ。
アジュバント効果とは、ワクチンが含まれる病原体に対する免疫反応を増強することで、ワクチンそのものの効果を高める役割をいう。
一般に、インフルエンザの予防対策に有効とされるワクチン接種は、ワクチンを投与することであらかじめ体内にインフルエンザウイルスに対する抗体を作り、感染を予防するとともに、感染した場合の重症化を防ぐ。
しかし、そのためには体内での、一定量以上の抗体の生成が必要になる。たとえば、免疫機能の低い高齢者や基礎疾患をもつ人、小児など、人によっては抗体の量が十分に増えずに効果が得られない場合がある。アジュバント効果は、そんなワクチンへの反応性を高めて充分な量の抗体を作らせる効果があり、その効果が期待できる食べ物に、たとえば舞茸やしいたけ、ヨーグルトなどがあるというのだ。
身近にある食べ物で「長く」「たくさん」摂取する
アジュバント効果を発揮すると研究されている食べ物には、舞茸やシイタケ、ヨーグルトがある。順天堂大学大学院医学研究科研究基盤センター 細胞機能研究室の竹田和由准教授は、その理由を、こう説明する。
「舞茸やシイタケ、ヨーグルトには、NK細胞(ナチュラルキラー細胞。リンパ球の一種で、体内でウイルスに感染した細胞などを排除する)の活性を上げるという報告があり、NK活性を上げる成分とアジュバント効果を発揮する成分は同じようです。したがって、ほかのきのこ類やヨーグルトにも同様の効果を発揮する成分が含まれていると考えられます」
竹田准教授によると、よりアジュバント効果を高めるには、量を摂るのも大切だが、ワクチンを投与する前から長い期間にわたって摂取する必要があるという。
「舞茸の研究の場合は、有効成分を濃縮して錠剤を使っての結果ですので、きのことして摂るのであれば、それなりの量を食べる必要があると考えられます。ですので、焼くよりは鍋のほうが良いでしょう」
と、やはり寒い季節には鍋料理が合っている。
また、ヨーグルトについては、
「免疫を上げるとされている乳酸菌、特に1073R-1株には、NK細胞を活性化すると同時に、獲得免疫に情報を提供する樹状細胞と呼ばれる細胞を活性化することで、インフルエンザワクチンの効果を高めるアジュバント効果が発揮されると考えられます。また乳酸菌の直接的、あるいは腸内フローラの改善による免疫の活性化効果も、アジュバント効果の発揮に関与しているとも考えられます」
と説明。
「ヨーグルトに含まれる免疫活性化物質の多くには、ある程度の熱耐性がありますので、少しくらい加熱しても問題ありません。ですので、そのままではなく、加熱料理に応用しても効果があると考えられます」
と、たとえば毎日の朝食としてヨーグルトを食べるほか、幅広い食べ方で摂取できるようだ。