早くも「中止」を見越して予防線を張ったバッハ会長
また、バッハ会長は来年3月、再選を目指す会長選を控えている。今のところ有力な対抗馬は見当たらないが、今年3月の東京五輪延期で失った求心力を取り戻すには、何としても来年の東京五輪開催を成功させたいところだ。しかし、早くも開催できなかった場合を見越して、狡猾な予防線を張っていると、先の毎日新聞は伝える。
「開催への流れを決定づけたいバッハ氏だが、菅首相との会談では予防線を張ることを忘れなかった。首相から開催への意欲を引き出し、主催者でありながら『決意は十分共有する』『我々は日本側に立っている』と、開催を支える役回りであるかような表現を使った。延期時はWHO(世界保健機関)のパンデミックが加速しているとの見解に根拠を委ねた。今回も、強く開催を求めているのは日本だという体裁をとり、不測の事態になった際の責任を軽減できるようリスク管理をしていた」
というわけだ。
こんなバッハ氏と組んで、菅首相は大丈夫なのだろうか。菅首相の狙いを朝日新聞(11月17日付)「菅首相 開催後『本格政権』狙う」が、こう説明する。
「国内外で新型コロナが深刻化するなか、首相は周辺に『五輪はいずれにせよやる』と述べた。その決意に透けて見えるのは、今後の政治日程だ。今の衆院議員の任期は来年10月まで。東京五輪・パラリンピックは7月~9月だ。五輪の成功を成果に衆院を解散して国民の信を問い、『本格政権』を樹立するシナリオを想定する。『五輪は最大の政権浮揚策』との認識が政府・与党に広がっている」
そのために菅首相とバッハ会長は、観客を入れて開催することで一致した。政府は海外からの観客には、通常求める入国後14日間の隔離措置を免除、公共交通機関の利用も認める案を検討中だ。第3波が猛威を振るっている欧米からの観客が自由に国内を回ることになりそうだ。