「見たい人とだけ契約するスクランブル放送にして」
一方、分科会の日本民間放送連盟と日本新聞協会の代表は、NHKの要望について、「時期尚早だ」と主張。さらに、「届け出義務化によってテレビ購入が控えられ、テレビ離れを加速させる。放送文化そのものが毀損されれば本末転倒だ」と反対意見を表明した。
民放連は、ネット動画を視聴するためチューナーなしのテレビを購入する若者が増えている点も挙げ、「国民の理解を得るには、受信料水準を相当引き下げることが重要だ」とした。
ほかの有識者からも「届け出の効果に疑問がある」「公平負担を目指すなら、不法に支払いを免れた者への割増金制度を導入するのが穏当ではないか」といった意見が出た。
また、NHKが今年からテレビ番組の同時配信に踏み切ったことに関連し、インターネット視聴者についても受信料の徴収の対象にするかどうかの議論があったが、総務省はまだ受診料を払わせる環境にないとして見送る考えを示した。いずれにしろ、総務省は近く制度改正の方向性を示す。
NHKが求めるテレビ設置の義務化について、反対意見が多い結果になったがネット上では、こんな声があふれている。
まず、圧倒的に多かったのが「スクランブル放送にしてくれ」という声だ。スクランブル放送とは、契約した人だけがテレビを視聴できるシステムのこと。日本ではWOWOWなど、BSやCSの一部チャンネルで実施されている。
「行政機関でもないNHKが届け出義務を国民に課すという発想が怖い。取り下げたとはいえ、テレビを持っていない人にも届け出義務化を求めていたとは...。今後はネット配信絡みでPCやタブレット、スマホ、カーナビがあるなら払えって方向に持っていこうとしているのか。それがまかり通るともう支払いから逃れられなくなる。もうスクランブルにしてくれ。見たい人から徴収するのが受信料だよ! なぜ全国民がNHKを支えないといけないのだ?」
「朝とか大河というドラマなんか必要なくて、たとえば『地方創生』等のための放送をしてこそ『公共』じゃないのかな? 今のNHKに公共性は感じない。なぜ観ない局にお金を払わなきゃならないの? それこそ、スクランブルにして観たい人だけみるのが今のデジタル社会、地デジテレビの活用じゃないのか。菅総理は、IT後進国日本のデジタル化を頑張るのではなかったか」
「届け出を義務化して税金のように受信料を徴収したいのなら、まず自分たちの製作費コスト削減から始めたほうがいい。教養番組に高いギャラのお笑い芸人や俳優、女優が必要なの? 娯楽部分も民放に任せればいい。新人女優・俳優のための朝ドラも要らない。アホみたいに豪華なセットを作る紅白もやる必要はない」
「NHKが頑なにスクランブル化を拒否する理由がわからない。現状のままだと、正直に受信契約して受信料を払っている人が、受信料を払わずにNHKを観ている人の分まで支払わされている。都市部では約半数しか正直に受信契約していないと聞く。まったく不公平極まりない制度だ」
ただ、スクランブル化については、ITジャーナリストの篠原修司氏はこう指摘する。
「『スクランブルをかけて観たい人からだけ徴収すればよい』とは私も思いますが、残念ながらスクランブルには政府側も否定的です。というのもスクランブルをかけると番組ごとの視聴率が出るため、その数字にコンテンツが引っ張られてしまう可能性が高い。NHKも政府も『それでは公共放送と民間放送が同じになってしまう』ことを理由にしています。この前提を頭に入れて声をあげないと、国民の声は聞き入れられないでしょう」
ちなみにNHKは公式サイトで「よくあるご質問 なぜスクランブルをかけないのか」について、「公共放送として、特定の利益や視聴率に左右されず、社会生活の基本となる確かな情報や豊かな文化を育む多様な番組を誰にでも提供する役割を担っている。また、緊急災害時には大幅に番組編成を変更する。スクランブルを導入すると、どうしても『よく見られる』番組に偏り、放送法がうたう『健全な民主主義の発達』の上でも問題がある」などと説明している。