保険料10%が健保解散の危機水準!
問題は、収支の均衡に必要な保険料率である実質保険料率が9.7%にまで上昇することだ。実質保険料率が10%を超える組合は512組合となる見込み。保険料率10%は中小企業の従業員などが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の料率で、保険料率が10%を超えると、企業は自前で健保組合を持つ利点が失われることから、「健保解散の危機水準」とされている。
2021年度は保険料収入が7兆6600億円に減少する見込み。平均標準報酬月額は前年比1.2%の減少、平均標準賞与額は同6.8%の減少を予想している。
保険給付費は4兆2400億円に増加、高齢者拠出金は3兆5500億円へ増加を予想。保険料率の平均を9.219%に固定した場合、経常収支差引額は6700億円の赤字に拡大する。新型コロナウイルスの発生前よりも2400億円の悪化を見込む。実質保険料率は、健保解散の危機水準10%を超え、10.2%に上昇すると予想されている。
22年度は、保険料収入が7兆6100億円に減少する見込み。平均標準報酬月額、平均標準賞与額の具体的な予想はしていないが、低下を見込んでいる。
保険給付費は4兆4000億円に増加、高齢者拠出金は3兆6100億円へ増加を予想。保険料率の平均を9.219%に固定した場合、経常収支差引額は9400億円の赤字に拡大する。新型コロナウイルスの発生前よりも3300億円の悪化を見込む。実質保険料率は、10.5%に上昇すると予想されている。
健保連では、すでにコロナ対策として保険料の納付猶予を実施しており、その額は8月時点で236億円、年度末には500億円程度に膨らむ見込み。さらに景気の悪化は長期に及び、「現下の状況では事業主による事後納付ができない場合が多いと見込まれる」としており、危機感を高めている。
結果的に、特定業種だけでなく、多くの業種の健保組合で景気低迷による財政悪化の拡大が懸念され、「大幅な保険料率の上昇を迫られることになる」と予想している。
もし、保険料率が大幅に引き上げられれば、企業と従業員の保険料負担が増大し、さらに負担に耐えられなければ、健保組合そのものの解散という選択肢を選ぶ企業が続出することになろう。
なお、参考までに健保連が平均標準報酬月額と平均標準賞与額の予測ために8月に行った「報酬総額調査」(回答:1021組合)の結果が興味深いため、一部を掲載しておく。
2020年度の見込みは、平均標準報酬月額が前年比1.6%減、平均標準賞与額が同15.0%減で、業種別では以下のようになっている。
《平均標準報酬月額の減少が大きい業種》
電気・ガス・熱供給・水道業 5.4%減
生活関連サービス業、娯楽業 5.1%減
繊維製品製造業 3.2%減
《平均標準賞与額の減少が大きい業種》
生活関連サービス業、娯楽業 54.7%減
宿泊業、飲食サービス業 50.5%減
印刷・同関連業 27.7%減
(鷲尾香一)