新型コロナウイルスの影響で、企業の健康保険組合の運営が危機に陥っている。
このままだと、2021年度には企業や従業員が納める保険料率が、健保解散の危機水準の目安10%を上回ることになりそうだ。
サービス業、中小企業の健保組合に大打撃
健康保険組合連合会(健保連)は2020年11月5日、「新型コロナ禍による健保組合の財政影響」を発表した。それによると、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で企業業績が悪化し、標準報酬総額などの低迷が長期化する見通し。「健保解散」の目安と見られている保険料率10%への上昇が、当初予想の22年度から21年度に早まると予想されている。
健保連では、新型コロナの影響により、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業(観光業含む)、運輸業、卸売業など特定の業種の健保組合や、中小企業を中心とする総合健保組合が大きな影響を受けているとし、「このままでは保険給付や拠出金といった義務的経費の支払いに支障が出る恐れがある」と危機感を露わにしている。
健保連の見通しによると、全国約1400の健康保険組合の合計保険料収入は19年度が8兆2438億円だったが、20年度には7兆9400億円、21年度には7兆6600億円、22年度には7兆6100億円に減少する。
19年度は、保険料収入から支出である保険給付費4兆1177億円と高齢者拠出金3兆4344億円を差し引いた経常収支差引額は2501億円の黒字だったが、前年度と比べて黒字幅が551億円減少した。個別の健保組合ベースで見た場合、赤字組合は前年度から62組合増加し、484組合となった。
保険料収入のベースとなる保険加入者の平均標準報酬月額は前年比0.5%上昇したが、平均標準賞与額は同0.3%減少した。この結果、平均保険料率は前年比0.01ポイント上昇して、9.22%だった。
これに対して、20年度は新型コロナの影響による企業業績の悪化で賃金が低下し、保険料収入が7兆9400億円に減少する見込み。平均標準報酬月額は前年比1.6%減少して37万1288 円、平均標準賞与額は同15.0%減少して95万5142 円と予想している。
保険給付費は新型コロナによる受診控えの影響で4兆900億円に若干の減少、高齢者拠出金は3兆5300億円への増加を予想し、保険料率の平均を9.219%に固定した場合、経常収支差引額は当初予想の2316億円の赤字から2404億円の赤字に拡大する。新型コロナウイルスの発生前よりも100億円の悪化を見込んでいる。