世の中で「一流」と言われる人にはある共通点があります。それは、ご先祖さまを大切にすること。たとえば、成功している企業経営者には、会社の中に神社や仏壇をつくって、社員にもそれをしっかりお奉りするよう指導している人がいるものです。
私生活でも、毎日きちんと仏壇に線香やお水を上げたり、仏壇はなくても自分なりのやり方で、先人への感謝を表現したりしている人が多くいます。自分と血のつながっている直接のご先祖さまに限らず、日本人全体のご先祖さまという意味で、さまざまな先人への感謝の儀式にも一流の人は意識を払うのです。
「なぜ、一流の人はご先祖さまを大切にするのか?」(一条真也著)すばる舎
先祖を敬うということ
今回は、ベストセラー作家の一条真也さんに「先祖を敬うことの意味」について話をうかがいます。
一条さんは現在、株式会社サンレーの代表取締役社長、全国冠婚葬祭互助会連盟会長、九州国際大学客員教授の要職にあります。ご先祖さまを敬えば、どんな力が自分に与えられるのでしょうか。一条さんは、先祖を敬うことの意味を、次のように解説しています。
「『一流』ということと『ご先祖さまを大切にする』ということに、果たしてどんな関係があるのでしょうか。キーワードは『伝統』です。あるいは連綿と続く『歴史』を現代に生かすこと、と言っていいかもしれません。長い年月の中で培われた英知の一部に、『伝統』というものがあります。例えば、一流の旅館、一流の料亭があります。『老舗』という言葉もあります」
「『一流のホテルはサービスが違う』『あそこのすしの味は一流だよ』。このように一流の陰には『伝統』というものが常に見え隠れしています。老舗料亭だけでなく、路地裏のラーメン店にも一流の店は存在します。私がよく通うラーメン店は先代からスープ作りを守り続けている店です。1杯700円ですが、『超』がつく一流店だと胸を張って人にすすめることができます」
一条さんは「一流」とは高級である必要はない、高級店や、ミシュランで星を獲得した店だけが「一流」ではないと主張しているのです。これには、どのような意味があるのでしょうか。
「焼き鳥屋やうなぎ屋でも秘蔵のタレをつぎ足しながら、一方で新しい味を追求している店を知っています。一流とは、長い時間の中で培われてきた英知を惜しげもなく提供すること。それを『伝統』と呼びます。ただし、守っているだけではありません。そこには時代に合わせた創意工夫があります。それができることもまた一流の証しです。これを『革新』といいます」
と、一条さんは言うのです。
「『ご先祖さまを大切にする』ことは、こうした伝統を継承し、一方で、それを今に生かすために『革新する心』を持つこととイコールだと感じています」