後継者難倒産、コロナで加速 1~9月前年の1.5倍 年間最多ペース

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   少子高齢が進むなか、中小企業では事業後継が大きな課題の一つになっている。東京商工リサーチが2020年11月2日に発表した調査結果によると、今年1~9月に発生した後継者難による倒産は278件で、前年同期比54.4%増と急増していることがわかった。

   同社が集計を開始した2013年以降で年間(1~12月)の最多を記録した2015年(279件)を大幅に上回り、最多件数を塗り替えることが確実だ。今年になって突然社会を覆ったコロナ禍の影響が大きいとみられる。

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トップの高齢や健康不安が経営リスク

   2020年1~9月に発生した後継者難を要因とする倒産のうち、48.5%とほぼ半数の135件は、1980年代以前に設立・創業した業歴30年以上の企業。また、倒産に至った代表をめぐる理由は、「死亡」が119件(前年同期比21.4%増)と最多で、次いで「体調不良」の96件(同57.3%増)。構成比は前者が42.8%、後者が34.5%と、1、2位で計215件と77.3%を占める。

   トップの高齢や健康不安が、後継者がいない企業での最大の経営リスクになっている。

   2020年1~9月の全国の企業倒産件数は6022件(前年同期比2.4%減)で、前年同期を下回っている。新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われて増えた倒産件数だったが、政府の支援策が奏功し、再び企業倒産は小康状態になった。

   その一方で、後継者難倒産は急増。代表者が高齢化などに悩むなか、コロナ禍の直撃を受けて事業意欲が低下したとみられる。

   後継者難倒産が、全倒産に占める割合は、2013年1~9月は2.1%だったが、2020年同期は4.6%に拡大した。

   東京商工リサーチによると、中小企業では、代表者が営業や経理の責任者を兼務することも少なくなく、このことが会社全体での情報共有に障害となり、後継者候補などブレーンも育ちにくい要因になっている。そのため、代表者の急な死亡や病気に直面すると事業継続が困難に陥りやすい。

   コロナ禍の収束が見えないなか、後継者がいない企業では倒産や廃業が加速する可能性も高いという。

   みずほフィナンシャルグループ系列シンクタンク、みずほ総合研究所の上席主任コンサルタント、堀内直太郎さんは、2020年8月25日に「ウィズコロナの事業承継に必要な中長期的『構造変革』の備え」と題するレポートを公開。このなかで東京商工リサーチが7月に発表した「2020年上半期(1~6月)『後継者難』の倒産状況調査」を引用して、コロナ禍の収束が見通せないこと関連づけて、経営者の高齢化や人手不足による事業承継問題が深刻さを増していることを指摘。「内に後継者がいない企業の中には、これまで想定してこなかったM&Aを具体的に検討し始めるケースも少なくない」と、指摘している。

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