「縦割り行政の打破」を掲げる菅義偉政権は、中央省庁の改革に乗り出している。改めて中央省庁の官僚たちの仕事ぶりが問われる形だが、当の職員たちにとってもっとも働きやすい職場はどの省庁だろうか。
就職・転職のジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワークが、会員ユーザーの口コミ投稿から調査した「官僚にとってもっとも風通しがよく、チームワークのある組織ランキング」を、2020年10月28日に発表した。
特許庁は審査官に裁量が与えられ、個人が尊重される
「OpenWork」は、主に社会人の会員ユーザーが自分の勤務している企業や官庁などの口コミ情報を投稿する国内最大規模のクチコミサイトだ。会員数は約340万人(2020年1月時点)という。「年収・待遇」「職場環境」「社員の士気」「社員の育成」「風通しの良さ」など8つの項目で、自分の勤め先を評価して投稿する。今回の調査では、中央省庁に務める7575人の勤め先評価リポートを対象に、「職員の相互尊重」と「風通しの良さ」の評価点が高いところを「チームワークがいい職場」としてランク付けした。
チームワークのよさの根底にあるのは、いかに組織の中で、「個人の尊重」が重視されているかだ。最近、若い世代の「官僚離れ」が深刻になっている。2020年度の国家公務員総合職志願者数は過去最少を記録した。
また、内閣人事局が今年6月に発表した「女性職員の活躍とワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」によると、30歳未満の若手男性官僚の7人に1人、同女性官僚の10人に1人が「数年以内に辞職したい」と答えているありさまだ。だから、風通しがよく、働きやすい職場に変わることが、縦割り行政の打破以上に求められるわけだ。
その「チームワークがよく、もっとも個人を尊重する職場」の1位に輝いたのが特許庁だ。続いて2位に経済産業省、3位に環境省、4位に裁判所、5位の衆議院......と続く。またワースト5は、農林水産省、国税庁、公正取引委員会、警察庁、検察庁という結果に=別表参照。
特許庁は、経済産業省の外局として、発明、実用新案、意匠、商標などの産業財産権に関わる審査を行っている。こうした事務を行うことによって経済と産業の発展を図ることを任務とする。クチコミを見ると、審査官一人ひとりに裁量が与えられて、個人の考えが非常に尊重される風土であることがわかる。こんな評価の声が多かった。
「審査部は比較的フラットな組織体系だ。基本的に審査業務は一人で完結するため、各人の判断が尊重されやすい。特に審査部は、お役所らしく堅実でまじめな人が多いように感じる」(審査官、男性)
「個々人が特許性の判断を行う権限を持っていることもあり、比較的個人の考えが尊重される風土がある。審査部の職員はほとんどが審査官なので、論理的に対話をすれば、年次に関わらず聞き入れてくれる人が多く、風通しのよい職場である」(審査官、男性)