コロナ禍で社員の帰属意識は薄らいだ? 会社への「ワクワク度」を測ってみたら......(大関暁夫)

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   コロナ禍対策によるテレワークなどの進展で、組織内における人と人のつながりが希薄になりがちになり、組織の求心力強化が注目を集める最中、興味深い調査が公表されました。法政大学大学院の石山恒貴教授が中小企業に勤務する社員1000人を対象に行なった、「働く姿勢と組織に関する調査」がそれです。

   石山教授によれば、この調査は階層別「会社ファン度」を測るのが目的。「会社ファン度」は、その社員の「会社への誇りと満足」と直結しているものだそうです。「自分の会社が好きか」と「会社にいけることにワクワクするか」という、「会社への誇りと満足」について言葉を変えて聞いた2つの質問に対する階層別回答の比率の違いに、かなり興味深い結果が出ています。

  • コロナ禍で社員の帰属意識は薄らいでいる?
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一般社員の「会社への誇りと満足」は低すぎ!?

   まずは、調査結果の一覧は以下のとおりです。

Q自分の会社が好きか
あてはまる  :役員(64.1%)部長(45.4%)課長(36.5%)一般(26.9%)
どちらでもない:役員(28.2%)部長(32.1%)課長(32.9%)一般(42.9%)
あてはまらない:役員( 7.7%)部長(22.5%)課長(30.5%)一般(30.2%)

Q会社にいけることにワクワクするか
あてはまる  :役員(27.4%)部長(16.9%)課長(16.1%)一般(11.6%)
どちらでもない:役員(45.3%)部長(39.4%)課長(28.5%)一般(25.4%)
あてはまらない:役員(27.4%)部長(43.8%)課長(55.4%)一般(63.1%)

   「会社が好きだ」と断言できる社員が、役員では60%を超え、部長でも5割近くいるのに対して、一般社員では3割に満たないという大きな差が出ています。一方で、「会社にいけることにワクワクするか」について「あてはまらない」と答えた社員は、役員では3割以下にとどまっているのに対して、一般社員では6割以上にものぼっています。

   冒頭にも述べたように、今のコロナ禍において企業では、テレワークの浸透や職場でのソーシャルディスタンスを意識するがゆえの社員間距離の拡大もあり、一般に社員の組織帰属意識が薄らいでいくのではないか、という懸念が広がっています。

   その意味では、この2つの質問の結果が示唆する「会社への誇りと満足」の度合いを高めることが、企業がどのような状況下にあっても、組織の求心力を高めることにつながると言えそうです。

   それにしても、この調査結果を、どうとらえたらいいのでしょうか――。組織内で地位の高い人の「会社への誇りと満足」が高いのは当たり前とも言えますが、やはり気になるのは一般社員の「会社への誇りと満足」の低さのほうでしょう。

   大企業であるならば、企業のネームバリューや知名度、あるいは上場企業であるという事実が、その組織で働く者の帰属意識やモチベーションを向上させるということも大いにあるわけですが、中小企業ではそれは期待できません。

   とはいえ、会社が好きではない、会社にいけることにワクワク感がない、そのような社員が中小企業では6割以上を占めているという現実には、愕然とさせられました。

   コロナ禍での職場環境変化によっては、社員の転職、退職による定着率の低下を想像以上に容易ならしめるのではないかとも思えるわけで、中小企業経営者にとっては由々しき数字であることは間違いないでしょう。

「正」の影響を与える4つの要素

   石山教授は、中小企業はいかにして「会社への誇りと満足」を高めたらよいのかということのヒントになりそうな、「会社への誇りと満足」が企業組織の日常的などのような事柄と関係しているのかについて、重回帰分析により解明された結果にも触れています。

   それによれば主に4つの要素が「会社への誇りと満足」に正の影響を与えているとして、「理念浸透の実現」「助け合いと協力の文化」「成長と多様性の尊重」「心理的安全性」をあげています。

   「理念浸透の実現」は、中小企業では意外にお座なりにされやすいことかもしれません。ただ単に経営理念を壁に掲げるだけではなく、社長自らが自社の理念がどのように実践されるべきであるのか、日々具体性をもって社員に意識づけする必要があるでしょう。

   「助け合いと協力の文化」は、セクショナリズムをなくすことが大前提となります。技術部門と営業部門のいがみ合いなどはよくある話ですが、部門間の相互理解を助長するために、階層別で情報を共有するコミュニケーションの場を設けることが必要でしょう。同時に社長を含めた、上下関係のコミュニケーションの円滑化も重要です。コミュケーションの悪い組織を誇りに思う社員は、少ないはずです。

   「成長と多様性の尊重」は、常に教育の場を設け、社員一人ひとりが毎年成長を実感できる環境をつくってあげることが大切です。日々同じことの繰り返しに陥りがちな中小企業ですが、マンネリは怠惰であるとの意識をもって社長自ら社員成長の機会を作ってあげてほしいところです。多様性はいわゆるダイバーシティです。社員に画一を求めるのではなく、ベテラン、若手、女性それぞれの感性や感覚を尊重した対応を心掛けてほしいものです。

   「心理的安全性」は、まずは倒産の不安がないこと、失業の不安がないこと。前者は決算情報の開示などを通じて、経営の安定感が常に社員に伝わっていること。後者は理不尽に社員を退職に追い込むような、乱暴な労使関係でないということです。そしてもう一つ、職場内でパワハラ等が起こりやすいような、職場内リスクを感じさせないことも重要でしょう。

   コロナ禍であればなおさら、中小企業経営にとって重要なファクターが並んでいるように思います。コロナ対応の組織運営策の策定などの参考にしていただければ幸いです。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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