緊急通報ができない!
じつは、電話リレーサービスは2002年12月から「自立コム」(東京都渋谷区)という民間企業が開始。しかし2004年3月に同社が、採算が取れないことを理由にサービスを中止するなど、いくつかの企業が乗り出したのだが撤退している。
唯一、プラスヴォイス(仙台市)が2004年から現在もサービスを続けており、利用時間は8時から21時までで、1回あたりの利用料金が330円、使い放題の場合には月5500円となっている。
また、日本財団は2013年9月から、「電話リレーサービス・モデルプロジェクト」の全国で無料試験を行っており、障害者手帳保有者を対象に8時から21時まで、サービスを提供している。
通信料は利用登録者の負担だが、通訳料は補助金などで無料となっており、2019年9月時点で約 1万500 人が利用しているが、2021年3月 31日にサービスを終了する予定だ。このほかにも同財団では、全国6か所に「手話フォン」という公衆電話を設置している。
聴覚障害者等向けには、情報通信研究機構(NICT)が開発した聴覚障害者等と聞こえる人とのあいだを文字と音声の相互変換でつなぐスマートフォン、タブレット端末用のコミュニケーション支援アプリ「こえとら」があり、累計で約19万ダウンロードとなっている。
また、聴覚障害者等の利用者が自身のスマートフォンやタブレット端末の専用アプリに文字や音声を入力し、固定電話やスマートフォンを利用する聞こえる人との通話を可能とするNTTドコモの「みえる電話」がある。
ただ、「こえとら」も「みえる電話」も通訳速度や使い勝手の問題が指摘されている。何よりも問題なのは、こうした聴覚障害者等の電話サービスが警察などへの緊急通報ができないことだ。これはサービス提供側の問題でもあり、警察など通報を受ける側の体制の問題もある。
聴覚障害者等は健常者よりも日常生活で緊急事態に陥る可能性が高いと考えられ、一方で警察や救急などへの通報ができないのは極めて重大な問題だ。
政府は日本財団の無料試験が終了する2021年3月末までに、電話リレーサービスの実施を目指している。菅首相は携帯電話料金の引き下げに熱心だが、「電話リレーサービス」のような問題があることを十分に認識し、より早い時期のサービス開始にも力を入れて欲しいものだ。(鷲尾香一)