大リストラ時代がやって来た! 日立金属、コカ・コーラ、ファミリーマート、リクシル... 上場企業の早期退職募集が2倍以上に急増(1)

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   新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ついに「大リストラの時代」がやって来た。上場企業の早期・希望退職者募集が2019年の2倍以上に急増していることがわかった。東京商工リサーチが2020年10月30日にリポートを発表した。

   10月29日までに上場企業の早期・希望退職者募集が72社に達した。昨年通年(35件)の2倍超で、年間で募集企業が70社を超えたのは2010年(85社)以来10年ぶり。しかも、昨年までは黒字企業が堅調な業績を背景に、体力があるうちに構造改革を図る「黒字リストラ」が多かったが、今年は追い詰められた挙句の「赤字リストラ」が目立つ。

  • 希望退職を奨められたら、どうする?(写真はイメージ)
    希望退職を奨められたら、どうする?(写真はイメージ)
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人員削減 一部は20~30代の若手も対象に

   今回のリポートには、10月末に巨額赤字決算を発表した航空大手2社のANAホールディングス(全日本空輸)とJAL(日本航空)の大幅人員削減計画は、概要が未定のため含まれていない。 また、このリポートとは別に11月2日、レナウンが民事再生を断念。コロナ禍後初の上場企業の倒産となると主要メディアが報道したほか、住宅設備大手のLIXIL(リクシル)グループが10月30日、子会社のLIXILで1200人の希望退職者を募集すると発表した。

   リポートによると、上場企業の早期・希望退職者の合計は、判明分だけで1万4095人を数え、2019年通年(1万1351人)をすでに上回っている。72社を業種別にみると、アパレル・繊維製品がレナウン、オンワード、アツギなど13社で最も多かった。

   次いで、米中貿易摩擦と新型コロナウイルスの影響が大きかった電気機器が東芝、桂川電機、佐鳥電機、シライ電子工業など10社、自動車や船舶などの輸送用機器が曙ブレーキ工業、ユニバンス、芝浦機器など7社と続く。

   外食と小売りも、ロイヤルホールディングス、ペッパーフードサービス、海帆、ファミリーマート、三越伊勢丹などそれぞれ6社ずつあった。特に外食は6月以降、急速に希望退職を開示する企業が増え、4か月間で6社が募集を行った。

   外出や会合の自粛と長引く営業時間の短縮、さらに、テナント料や人件費などの負担も大きく、先の見えない業界の停滞感を反映した。

   募集人数で最も多かったのが、日立金属の1030人。次いで、レオパレス21の1000人、コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスの900人、ファミリーマートの800人、そして複数の子会社で募集を行うシチズン時計の750人などの順だ。2019年通年で1000人以上の大型募集は4社だったが、今年は10月30日までに2社にとどまる。

   業績別でみると、72社のうち54社(75.0%)が赤字を計上。赤字決算から人員削減に踏み切った実態が見てとれる。19年通年では半分以上が黒字企業だった。堅調な業績を背景に、年齢構成の是正や新規事業への経営資源の集中による先行型の「黒字リストラ」は一気にフェードアウトした格好となった。

   近年は、社員の年齢構成の是正を目的に、45歳、50歳以上など対象年齢を定めた募集が注目された。しかし、今年は対象年齢や社歴に関係なく、広く応募者を募る傾向が目立っている。一部の企業では、一刻も早い人件費の削減を迫られて、対象年齢を30代や20代まで下げているところもあるほどだ。

「選択定年」という名の肩たたき

   さらに、最近は「選択定年制度」の導入という形での希望退職募集のケースが目立つ。たとえば10月22日、JASDAQ上場のワンダーコーポレーション(書籍やゲームソフト・CD・DVD等の販売)が「選択定年制度の導入」を発表した。

主な上場企業の希望・早期退職者募集の年次別推移(東京リサーチ作成)
主な上場企業の希望・早期退職者募集の年次別推移(東京リサーチ作成)

   募集対象は45歳以上の正社員などで、期間は今年11月2日~11月16日。割増退職金に加え、希望者を対象に再就職支援も行う。親会社はRIZAPグループ(スポーツジムや健康食品、ダイエット食品の製造・販売などを行う子会社を総括する持ち株会社)だ。

   東京商工リサーチの取材に応じた、RIZAPグループの担当者によると、「募集人数を明確には定めていないが、応募人数ゼロは想定していない」と説明する。「選択定年」の募集は、2019年に日本ハムも45歳以上を対象に200人を募集した。やはり割増退職金と再就職支援プログラムを設けていた。

   「希望退職」と「選択定年」の違いは何か――。東京商工リサーチの取材に応じた日本中央社会保険労務士事務所の代表で、特定社会保険労務士の内海正人氏は、こう説明している。

「希望退職と選択定年制に明確な定義があるわけではない。選択定年制度を利用した退職者は、自己希望による選択として割増退職金を受け取るなどの優遇措置がある。選択定年制は50歳や55歳など一定の年齢を設定し、その年齢に達した時点で退職するかを選べる制度として機能する。ただ、過去の選択定年では、募集期間や退職日(予定)が設定されるなど、希望退職と変わらないものも存在する」

   リポートは、企業としてもネガティブなイメージの「希望退職」より、一見前向きな響きが良い「選択定年」を使った方が体(てい)はいいのだろう。特に、一般消費者や多くの就職希望者は、「希望退職」募集を実施した企業より、「選択定年」を導入した企業に好印象を抱くはずだ。

   とはいえ、退職者を募りたい企業の「逃げ道」にもなりかねない、と結んでいる。

(福田和郎)

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