「選択定年」という名の肩たたき
さらに、最近は「選択定年制度」の導入という形での希望退職募集のケースが目立つ。たとえば10月22日、JASDAQ上場のワンダーコーポレーション(書籍やゲームソフト・CD・DVD等の販売)が「選択定年制度の導入」を発表した。
募集対象は45歳以上の正社員などで、期間は今年11月2日~11月16日。割増退職金に加え、希望者を対象に再就職支援も行う。親会社はRIZAPグループ(スポーツジムや健康食品、ダイエット食品の製造・販売などを行う子会社を総括する持ち株会社)だ。
東京商工リサーチの取材に応じた、RIZAPグループの担当者によると、「募集人数を明確には定めていないが、応募人数ゼロは想定していない」と説明する。「選択定年」の募集は、2019年に日本ハムも45歳以上を対象に200人を募集した。やはり割増退職金と再就職支援プログラムを設けていた。
「希望退職」と「選択定年」の違いは何か――。東京商工リサーチの取材に応じた日本中央社会保険労務士事務所の代表で、特定社会保険労務士の内海正人氏は、こう説明している。
「希望退職と選択定年制に明確な定義があるわけではない。選択定年制度を利用した退職者は、自己希望による選択として割増退職金を受け取るなどの優遇措置がある。選択定年制は50歳や55歳など一定の年齢を設定し、その年齢に達した時点で退職するかを選べる制度として機能する。ただ、過去の選択定年では、募集期間や退職日(予定)が設定されるなど、希望退職と変わらないものも存在する」
リポートは、企業としてもネガティブなイメージの「希望退職」より、一見前向きな響きが良い「選択定年」を使った方が体(てい)はいいのだろう。特に、一般消費者や多くの就職希望者は、「希望退職」募集を実施した企業より、「選択定年」を導入した企業に好印象を抱くはずだ。
とはいえ、退職者を募りたい企業の「逃げ道」にもなりかねない、と結んでいる。
(福田和郎)