ディスプレイとしても楽しめる洋書を! 100年以上続く老舗書店の挑戦【Vol.19 北沢書店】

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「KITAZAWA DISPLAY BOOKS」

   今の北沢書店のスタイルに至ったきっかけは、2005年のこと。「洋子書のビジュアルに惹かれるお客さんもいるのでは」、という奥さんのちょっとしたアイデアだった。それは一郎さんには目から鱗の発想だった。

「これまでずっと読み物としての本としか考えておらず、装飾品として扱って良いものか、はじめはとても葛藤がありました」

   それでも、新たな挑戦に踏み切るきっかけになったのは、思いがけずお客さんから良い反応をもらったからだ。

「そこで初めて、ディスプレイとして洋書を求めているお客さんがいるんだとわかりました。商売として始めるならとことんやろう!と前向きに取り組んでいます」

   今では娘さんが中心となって、企業などのコーディネート事業を行っている。洋書のある風景を守り続けた、北沢書店ならではの発想の転換であった。SNSでの発信にも力を入れており、Instagramの美しい写真は好評を博している。

カラーごとに仕分けられた棚はうっとりする美しさだ(店内は撮影も可能)
カラーごとに仕分けられた棚はうっとりする美しさだ(店内は撮影も可能)

   挑戦を続けてきたことで、北沢書店の今がある。書架の配置を示す図には、棚にジャンル名ではなくアルファべットだけが示されている。「今後の変化も視野に入れ、柔軟に対応できるよう、あえてジャンル名は印字しませんでした」。

   お客さんの反応や時代の変化を探りながら、商売におけるベストを尽くすことに変わりはない。コロナ禍で前向きな気持ちになれたのは、あの挫折があったからこそだろう、と一郎さんは言う。

   そんな一郎さんの姿は、神保町の老舗書店の大らかな力強さを目の当たりにしたようであった。(なかざわとも)

※ 北沢書店ホームページ http://www.kitazawa.co.jp/</p>

書架の配置を示す図には棚にジャンル名とアルファべットが示されている
書架の配置を示す図には棚にジャンル名とアルファべットが示されている
なかざわ とも
なかざわ とも
イラストレーター
2016年3月学習院大学文学部卒。セツモードセミナーを経て桑沢デザイン研究所に入学、18年3月卒業。趣味は、宝塚歌劇団、落語、深夜ラジオ、旅行。学生時代より神保町に惹かれ、現在フリーペーパー「おさんぽ神保町」の表紙や本文のイラストを手掛けている。1994年、東京都生まれ。
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