新型コロナウイルスの感染拡大は、アフターコロナの時代になってからも、社会は大きく、さまざまな変化を招きそうだ。
本書「不動産激変 コロナが変えた日本社会」は、「不動産のプロ」である著者が、その立場からコロナ後の不動産の世界を展望し「激変」を予言。「まったく違う姿になっている」と述べている。
「不動産激変 コロナが変えた日本社会」(牧野知弘著)祥伝社
「値上がりするマンション」という価値観は薄れる
著者の牧野知弘さんは、数多くの不動産ビジネスを手がけてきた不動産事業プロデューサー。東京大学経済学部卒業後、ボストンコンサルティンググループを経て三井不動産に勤務。現在は、不動産事業の戦略構築などを支援するオラガ総研株式会社の代表取締役としてホテルや不動産のアドバイザリーのほか、市場調査や講演活動を行っている。
主な著書に「空き家問題」「民泊ビジネス」「業界だけが知っている『家・土地』バブル崩壊」などがある。
本書によれば、コロナによる不動産の変化はまず、従業員一人当たりの「3坪」で計算されてきたオフィスビルの需要が急減。いまでは誰でもそれとわかるが、テレワークあるいはリモートワークと呼ばれる在宅勤務の増加のためだ。
緊急事態宣言終了後も多くの企業でテレワークは継続された。日立製作所は社員の7割に対して週2日から3日、NTTは社員の5割を在宅勤務に。日清食品では出勤する社員数の上限を25%にした。
「通勤」というライフスタイルが変わり、通勤のウエイトが下がれば、家の選び方が変わる。1990年代半ば以降、夫婦共働きがあたりまえになり、子どもを保育所に預けて夫婦で都心に通勤するというスタイルが家選びの基準となっていたが、これも変わっていくに違いない。
海が好きな夫婦、山好きな夫婦ならばそれぞれ、通勤するには対象となりにくかったエリアを積極的に選ぶようになるだろう。
これまで都心居住が急速に進んだことで一部のマンションは購入時よりも値上がりして、資産価値が上がったマンションが多く出現し、マンション購入には投資的側面もあったが、ポストコロナ時代は、テレワークなど働き方の多様化に合わせて住まいの選択肢が多様化することで、値上がりするマンションといった価値観は薄れていく可能性が高いという。