両社とも「値下げ」は大勢が使う主力ではなくサブブランド
だが、こうした動きにいくつか疑問点が指摘されている。その一つが、これが値下げと言えるのか、という批判の声だ。なぜ、両社とも主力ブランドが料金を引き下げずに割安ブランドに新料金プランを出させたのか、という点だ。
10月28日朝のテレビ朝日系情報番組「モーニングショー」では、コメンテーターの浜田敬子・ビジネスインサイダージャパン統括編集長がこう批判した。
「なんで大手そのものが安いプランを提供できないのでしょうか。(利用者は)わざわざ割安に乗り換えなくてはいけないわけですよね。もっときめ細かいプランがあって、選択肢が多かったらいいなと思いますね」
もう一つの問題点は、「政治圧力」に対する携帯大手の猛反発だ。今回、総務省はアクションプランに「周波数の有効利用の促進」を盛り込んだ。これが、第4の事業者「楽天モバイル」に対する政府の露骨なバックアップだというわけだ。
毎日新聞(10月28日付)「『周波数』政治色濃く 割り当て見直しも」が、こう伝える。
「政治色の強い施策も盛り込まれた。大手3社が使う携帯に適した周波数『プラチナバンド』の割り当ての見直しだ。現状では既存事業者が退出しないと新たな事業者への割り当てはできない。だが、楽天もプラチナバンドが利用できる仕組みが整えば、楽天の通信環境が向上し、競争の活性化につながる」
「携帯大手幹部は『楽天を後押ししようという政府の意図を感じる。他の3社に対しては値下げをしっかり対応しないと、電波割り当てに影響するというプレッシャーでもある』と受け止める」
今回、サブブランドの一部の値下げプランだけにとどめたのは、大手の「反発」の表れなのだろうか。ネットでは「こんなプラン、値下げとはいえない」という、落胆の声があふれている。
フリーランスジャーナリストの山口健太氏は、こう指摘した。
「KDDIとソフトバンクは、政府から値下げ圧力のあった大容量プランについて『サブブランドに20GBプランを追加』で横並びになった。料金は4000円前後で、MVNO(編集部注:『格安スマホ』を提供する携帯電話会社)の20GBプランと同水準。ただ、中身は違いがある。KDDIは単純にUQモバイルのプランを追加したのに対し、ソフトバンクがワイモバイルに追加したプランには『家族割』『セット割』の適用ができない。大容量と同時に家族割やセット割を求める人は、ワイモバイルではなく本体のソフトバンクのプランに目を向けることになるはず。ソフトバンクは政府の要請を受け入れつつ、同時にアップセル(編集部注:高額の商品を勧める手法)を促すことでダメージを最小化したいという狙いが感じられる。残るドコモにはサブブランドがないだけに、どう対抗してくるか注目だ」