「10万円給付、その分だけ個人の貯金に回っただけだった」――。麻生太郎副総理兼財務相(80)が2020年10月24日、新型コロナ禍対策の国民1人一律10万円の特別定額給付金をめぐり、こう発言したことがネット上で激しい怒りを買っている。
主要メディアの報道とネットの声を拾うと――。
「先の不安が山のようにあるから貯金に回さざるを得ない」
主要メディアの報道を総合すると、麻生太郎氏が発言したのは10月24日、福岡市で開いた自身の政治資金パーティーでの講演だった。こう発言した。
「(個人の)現金がなくなって大変だということで、この夏、1人10万円給付というのがコロナ対策の一環としてなされた。(給付金の効果として)当然、貯金は減ると思ったらとんでもない。その分だけ貯金は増えました」
「お金に困っている方の数は少ない。ゼロじゃありませんよ。困っておられる方もいらっしゃいますから。しかし、現実問題として、預金、貯金は増えたのです」
これは、コロナで生活苦になった人がもともと少なかったので、給付金は貯金に回ってしまい、消費を喚起して景気を浮揚する効果は限定的だったと主張しているようだ。
麻生氏は現金10万円給付の決定前、2009年のリーマン・ショック後に実施した定額給付金は効果がなかったなどとして、一律給付に反対する考えを述べていた。
しかし、公明党や二階俊博幹事長などの強い要求に屈して10万円給付の実施に転じた経緯がある。
この発言に対しては、ネット上でさまざまな著名人が批判の声を上げている。日刊スポーツ(10月26日付)「長野智子アナ異議 麻生氏の特別定額給付金巡る発言」によると、フリーアナウンサーでハフポスト日本版編集主幹の長野智子(57)さんは26日、ツイッターで、
「消費も大切だけど、貯金せざるをえない国民の将来不安にこたえてください」
と訴えた。
これに対して作家の乙武洋匡氏が、
「本当に『給付金により貯蓄が増えた』というデータがあるなら公表したほうが発言に説得力が生まれるだろうし、たんなる憶測で話しているなら財務大臣としては迂闊に過ぎると思う」
とツイートした。
また、落語家の立川談四楼さんも、
「あんまり腹が立ったので1日置いたが、まだ怒りが収まらない。麻生さんの『10万円給付分だけ貯金が増えた』発言だ。10万円は通り過ぎただけで、羽が生えたように飛んでった現実を知らなさ過ぎる。毎月寄越せという人々の本音に想像すら及ばないのだ。それに施しをしてやったかの口吻はいい加減にしろ」
と、怒りのツイートをした。
経済ジャーナリストの萩原博子さんは、東京新聞(10月27日付)「麻生氏『10万円給付 貯金に回った発言』」の取材に対し、こう述べている。
「ボーナスは出ない、雇用は厳しい。先行きへの不安が山のようにあるから、みんな貯金に回さざるを得ないのよ。年収500万円の世帯は税金と社会保障で毎年150万円払っている。それだけ納めているのに、給付されたのは10万円。それで威張るなと言いたい。麻生氏は『カネを与えたのに貯金に回すとは何事だ』と言いたいかもしれないが、上から目線のトンデモない話。原資は税金で、麻生氏の財布からではありません」
「これほど世間感覚と離れた人が財務相なのは日本の不幸だ」
ネット上でも、こんな怒りの声があふれている。まず、麻生氏の政治家としての資質を問う声が多かった。
「なんで政界にいるのかなって、不思議に思うくらい政治家に向いていない。なんで福岡の選挙区の人はこの人を選ぶのかと、怒りさえ覚える。お坊ちゃまは引退して、実業家でもやっていてください」
「『お金に困っている方は少ない』『貯金は減ると思ったらとんでもない。その分だけ貯金は増えた』――。こんなふうに、世間の感覚と大幅に乖離している人間が財務相なのだから、この国の国民が幸せになるはずがない。麻生氏が総理時代に『カップラーメン、あれ1個300円?400円だっけか?』と記者会見で答えたのを覚えている。しかし、彼を財務相に任命したのは菅総理であることは忘れてはならない」
「10万円を消費しようが貯蓄しようが、大きなお世話! 財務大臣のポケットマネーを頂戴したわけでもないし、何でそこまで言われなきゃいけないのか。そもそも全国民に給付すると決めたのは自公による与党でしょ。それを今さらグダグダと男らしくないよ。そんなに税金渡すのが口惜しいか。本当に腹が立つ!」
「次を出したくないから、こう発言して世の中を『あの10万円は無駄だった...』的な空気に持っていきたいのかな...? と感じた。その分だけ貯蓄が増えた... はないでしょ? だって使った人も絶対いるわけだから。麻生氏に庶民の苦労や気持ちがわかるわけがない。国のお金をご自身のもの、財務省のものだと思っているのかしら。個人的には、とにかく辞めて欲しい」
10万円で助かった人も多いはずだ、という指摘の声が多かった。
「コロナで倒産した人や自殺した人、これからもあると思う。確かに全員を救済するのは無理だけど、給付金で助かった人もいるはず。それなのにこの人は、銀座のすし屋で何万円、赤坂のうなぎ屋やで何万円と、ありえないお金の使い方をするのに、給付金の話になるとケチくさいことを言うのはなぜ?」
「貯蓄に回した人もいるだろう。しかしコロナで仕事を失っても10万円で助かった人だっていることを忘れていないか?生活費や税金の支払いで、速攻でふっ飛んだ人だって多いでしょう。本当に10万円の使い方は人それぞれだったと思う。あのお金がなかったら...という人が多かったはずだ。その人々に対する想いはないのか。麻生さんってここまで冷たい人だとはなあ。財務省の言いなりにしかなれないならもはや不要です」
「自分は10万円で救われた。これからも働いて税金を納める」
最後に、この声を麻生氏に届けたい。
「麻生さんに言いたいのは、給付金でかろうじて生活が繋がったひとが少なからずいたのだよということ。自分も救われたうちの一人です。もともとは自分たちが稼いで納めた税金、これからも働いて納めます。またやるかやらないかは別として、最初の給付金は意味があったのは間違いありません」
「あの10万円の給付のおかげで救われた人が必ずいる。それだけじゃダメなのか? 1億人以上の人にお金給付して100人でも1000人でも助かった人がいたらそれでいいと思うし、それが本当の政治だと思う」
(福田和郎)