ブレグジットは2020年最後のトレードチャンス!
現時点でFTA(自由貿易協定)の障害になっているポイントは二つ。漁業権の問題と、政府補助金制度の問題です。
政府補助金制度に関しては、英国が自由に補助金を決めることができると、それを利用してEUにダンピングまがいのことをするのではないかという疑念が、EU側にあります。EUという大きなマーケットに自由にアクセスする権利を得たい以上、その疑念に英国は応じないといけません。補助金を自由に決めることができないというのは、主権に対する侵害と保守派は考えるでしょうが、ここは妥協が必要でしょう。
一方、漁業権に関しては、フランスが主張しすぎでしょう。そもそも、英国の海です。漁獲割当高を数年ごとに更新していく方式しかないのではないでしょうか。マクロン大統領が強硬に主張していますが、ここはドイツのメルケル首相に登場してもらい、説得してもらいたいところです。漁業権で全体を台なしにするわけにはいかないでしょう。
12月末というブレグジット移行の期限を考えると、10月末が現実的な交渉期限とEU側は設定してきました。その後、各国議会で批准されなければならないからです。もしかすると、そこは少し超える可能性はあるでしょう。
しかし、メインシナリオとしては、FTAは絶対に締結されなければならない。そうでなければ、ただでさえコロナ禍で大変なところに、大きな混乱を招きます。それは英国もEUも同じです。ただ、ダメージはどうしても英国側のほうが大きいのです。EU側は強硬ですが、最後はメルケル独首相、フォン・デア・ライエンEU委員長が裁定に動くのではないかと思います。
英ポンドは、ブレグジットの影響で割安になっています。FTA締結に成功し、スムーズなブレグジットに成功したならば、英ポンドはある程度買い戻されるはずです。
8割の可能性でFTAが実現し、ポンドドルは1.35-1.40方向に、ポンド円で140-150円といったレベルに行くのではないでしょうか。
ただ2割、どうしても合意に至らず、ハードブレグジットという可能性も残っています。その場合は、英ポンド/米ドルは1.20ドルからもっと下に暴落すると思われます。
膠着マーケットが続いていましたが、このブレグジットは米大統領選挙と並び、2020年最後のトレードチャンスとなるのではないでしょうか。(志摩力男)