神保町のメインストリート、靖国通りに面する赤煉瓦の建物が「原書房」だ。
お店が始まったのは1932(昭和7)年。初めは一般的な古書店を営んでおり、先代から易学や浮世絵を専門とした。天井の高い1階店内では易学、四柱推命、気学、姓名学、風水、占星術、タロットなどの専門書や道具を扱う。国内随一の品揃えで、占いマニアや先生たちに愛されている。
2階は落ち着いた和の雰囲気で、大きな本棚には浮世絵の複製版画や研究書や図録が並ぶ。その品揃えはこちらも国内でナンバー1だ。店内はギャラリーとなっており、額装された美しい浮世絵が飾られている。今回は3代目社長である原敏之さんに、2階の浮世絵フロアについて、お話をうかがった。
アメリカでの経験が窓口を広げるきっかけに
浮世絵のマーケットは世界規模である。原書房でも注文や買い付けは、海を越えて海外との取引も多い。子供の頃から浮世絵を見て育ち、その魅力や商売のおもしろさに惹かれていた原さんは、経験を積むためにアメリカの美術品オークション会社で6年ほど勤め、日本美術部門のスペシャリストとしてキャリアを積んだ。そこでの経験や出会いが原書房の経営に大いに役立っている。
「2001年に帰国してからウェブサイトを整え、海外のお客様にも情報を発信するようにしました。今では世界中からお客さんがいらっしゃいますね。
海外の渡航が難しくなっている今、店に来る観光客やお客さんの数にはかなり影響が出ています。それでもなんとかやっていられるのは、これまで築いてきた基盤があるおかげですね」
コロナ禍の打撃は大きいが、同時にこれまでの努力の成果も実感しているという。