徴用工問題で、韓国の裁判所に差し押さえられた被告の日本企業の資産の現金化が迫っている。もし、現金化されたら日本と韓国の対立は致命的な段階に突入する。
そんななか、韓国の有力紙が、自民党がトンデモない報復手段を考えているとスクープした。在日本韓国大使館と、サムスン電子日本支社への差し押さえを政府に強硬に訴えているというのだ。
さすがに政府も「法的に無理だ」と反対しているというが、この報道、どこかおかしい。ネットの声も拾うと......。
自民党外交部会の強硬派が暴走?
この「トンデモ」(?)スクープを報じたのは、発行部数が約230万部と韓国最大を誇り、歴史も古い朝鮮日報だ。編集方針は保守的で、現在の文在寅(ムン・ジェイン)政権を激しく批判し続けている。
2020年10月18日付で「【独自】在日韓国大使館・サムスン電子日本支社の差し押さえも検討」という見出しで報じている。「独自」とトップに掲げたのはスクープであることを表している。
「日本の政権与党、自民党が韓国大法院(最高裁)による徴用賠償判決で差し押さえられた日本企業の資産が現金化された場合の報復措置として、東京の在日韓国大使館、サムスン電子日本支社の差し押さえを日本政府に要求したことが10月18日までに明らかになった。これについて、日本政府は法的検討を行い、困難だとの立場を伝えたが、自民党は依然として強硬対応を求めている」
菅義偉首相が就任以来、徴用企業の資産が売却された場合、訪韓できないとの立場を盛んに韓国政府に伝えた背景には、自民党のこうした強硬な立場があったというわけだ。朝鮮日報が続ける。
「複数の東京の外交筋は『自民党外交部会の強硬派は、差し押さえられた日本企業の資産が売却された場合、断交を辞さないほど強硬に対応すべきだとし、東京の韓国大使館とサムスン電子支社に対する差し押さえ案を報復措置として要求した』と述べた。韓国政府を代表する大使館と財界を象徴するサムスン電子に対する差し押さえを求めた格好だ」
この荒っぽい要求に対し、日本政府は法務省、外務省などが法的検討を経て、日本の憲法や法律に反しており、そうした報復措置は難しいとの立場を自民党側に伝えた。在日韓国大使館は条約に基づく治外法権区域であり、サムスン電子は(戦後に創業されて)徴用問題とは無関係な民間企業だからだ。
「それでも自民党外交部会の一部は収まらなかった。もし資産が売却されたら、東京の韓国文化院(編集部注:韓国文化を体験できる文化施設)に対する制裁、韓国の駐在外交官の人数制限などの措置を取るべきだとする要求を続けている。別の外交筋は『在日韓国大使館とサムスン電子の差し押さえというのはとんでもない発想だが、自民党がそれを求め、日本政府が法的検討まで行ったという事実が重要だ』とした上で、『それほど日本の保守層が資産の売却問題に敏感であることを示している』と指摘した」