フェルドマン教授の「コロナ禍からの脱出」講座 必要なのは「ゴジラを倒す秘密兵器」だ!

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   テレビ東京の経済情報番組「ワールドビジネスサテライト」のコメンテーターとしておなじみのロバート・フェルドマンさん。本書「フェルドマン教授の未来型日本経済最新講義」は、5年前の「フェルドマン博士の日本経済最新講義」(文藝春秋)以来の著作だ。

   本書では、この5年間に大きく姿を変えた世界経済について、そしてコロナ後の日本経済の展望について解説。必要なことは技術革新。新しい技術が現われれば、経済を変えることができると力説している。

「フェルドマン教授の未来型日本経済最新講義」(ロバート・フェルドマン著)文藝春秋
  • 予測ではコロナ以前に戻るのは2021年末だが……
    予測ではコロナ以前に戻るのは2021年末だが……
  • 予測ではコロナ以前に戻るのは2021年末だが……

待望される「オキシジェン・デストロイヤー」の開発

   2020年は初めての来日から数えて50年目というフェルドマン教授。当時は高校生で交換留学生として1年間ホームステイをして日本で過ごして以来、日本と日本語が好きになったという。フィールドによっては日本人より日本通だ。

   新型コロナウイルスなどの怪物を「ゴジラ」にたとえ、ゴジラを倒した芹沢博士、その秘密兵器「オキシジェン・デストロイヤー」が待望されるという。「芹沢博士役は、世界中の科学者・発明家・起業家たちです。彼らの活動を刺激して、普及させて初めて各々のゴジラたちを倒せるのです」という。

   本書では、それらの候補として、AI(人工知能)、デジタル通貨などが挙げられ、日本の技術革新のどこまで進んでいるのかが論じられる。

   本書によると、外国の企業が日本国内で研究開発を行う割合が極めて低い。日本国内に研究センターを作る外国企業もあるにはあるが、投資額は少なめだ。そのため、日本の情報は海外で生かされず、海外の情報は日本と共有されないという構造上の弱点を指摘している。

自民党勉強会でコロナ対策を提案

   フェルドマン教授は自民党本部で開かれる国会議員の勉強会に講師に呼ばれることも。2020年4月の会では新型コロナウイルスの問題を取り上げ、緊急事態宣言や外出制限、所得補助政策など5つを提案した。政府に採用されたわけではないが「参考にしてもらえたかもしれない」。

   本書では、自らの提案を踏まえて政府の政策について達成度の評価をのべている。それによると、は、「導入が遅れ期間が短かった」として、達成度は「C」。国民の心構えのためには長く設定する必要があったとし、感染が早く収束した場合には解除する体制にしておけばよかったという。

   所得補助政策で、フェルドマン教授は「終身雇用ではない勤労者を中心に」と提案。「生活に余裕がない人ほど打撃が大きいので、迅速な補助が必要。マイナンバー制度を利用する手もあるはず」と提案の理由を述べたが、結果的には「社会的弱者に向けた政策は少なく、処理のスピードも遅く、マイナンバー制度も準備不足」とバッサリ。こちらも達成度は4段階評価で「C」の評価。落第ではないが、ギリギリだ。フェルドマン教授は一方で、個人の印象と断りながら、日本人の衛生観念や公共心が極め高いことが、感染拡大を抑えた一因ではないかと指摘。そうした国民性が寄与して日本での感染拡大は比較的抑えられる可能性があり、コロナの封じ込めは景気回復を早める見込みがある。

   本書で引用されている米モルガン・スタンレーの正式予測(2020年7月4日現在)では、日本のGDP(国内総生産)がコロナ危機以前に戻るのは2021年末とされる。

「フェルドマン教授の未来型日本経済最新講義」
ロバート・フェルドマン著
文藝春秋
税別1400円

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