コロナ禍を過ごすための「新しい生活様式」へのシフトが求められていることを背景に、テレワークの導入や移住の動きが活発化している。
こうした新たな需要を、ビジネスに転化する動きが盛んだ。
売りものは1時間400円で自由に使える「仕事場」
百貨店大手のそごう・西武(東京都千代田区)は、横浜市戸塚区にある「西武東戸塚S.C.」でテレワークなどに利用できるワーキングスペースを、2020年10月16日に稼働した。
コインスペース株式会社(東京都渋谷区)が運営する「コインスペース」(広さ152平方メートル)を43席用意した。料金は30分200円、1時間400円、1日1500円などのタイプがあり、電源やWi-Fiが備えられている。飲食の持ち込みは自由で、予約なしで自由に利用できる。
西武東戸塚S.C.周辺は横浜や東京への通勤者が多く、コロナ禍でワーキングスペースのニーズが高まっている。同店は2020年3月に、ショッピングセンターに衣替え。地域に向け従来の百貨店の枠にとらわれない提案に努めていたことで、コインスペースの導入が実現した。
新型コロナの感染拡大のなか、商業施設では退去するテナントが増えており、そのスペースにテレワークの受け皿として需要が増しているコワーキングスペースを設けるケースが多くなっている。
「住む」前に「泊まって」試す
コロナ禍によるテレワークの進展で、思い切って「移住」するという手もクローズアップされている。人口流出に悩む地方都市では、積極的に相談会を催しており、その活況ぶりが報じられている。
とはいえ、知らない土地にいきなり、というのはどうも...... という移住希望者は少なくない。そこで、ホテル事業を営む株式会社サン・クレア(広島県福山市)は、広島移住を考えている人たちに向け、「暮らす」ように泊まれるホテルをオープンする計画を明らかにした。10月16日の発表。
ホテルは「LAZULI Hiroshima Hotel & Lounge(ラズリ ヒロシマ ホテルアンドラウンジ)」。JR広島駅から徒歩で14分、市電的場町駅から9分の場所に建つ。12月2日のオープンを予定している。
「広島移住の入口」と位置付けられたホテルで、スタッフが広島旅のプランニング、広島に馴染むためのサポート、移住に関する相談窓口やコミュニティづくりまでサポートするという。
リノベでテレワーク仕様の「職住融合型賃貸」物件
テレワークの導入が進み、自宅を改造してワーキングスペースを設けるケースも増えているが、持ち家や分譲マンションならともかく、賃貸物件ではままならない。そこで、ついに「職住融合型賃貸」の物件が登場した。
横浜市の不動産会社、フロンティアハウスが開発した「With working」がそれ。10月15日に発表した。東京都目黒区にある賃貸物件である、間取り2LDKの洋室をリノベーションして、壁一面利用した棚とデスクを備え付けたワーキングスペースを設けた。あえて面積を狭くし、仕事に集中できる空間を演出した。
また、もともと3点ユニットだったバスルームを、バスとトイレ、洗面台に分けて、仕事場としてのメリハリにも配慮した。
同社では新型コロナの感染拡大に伴う緊急事態宣言を受け、4月初めから5月末までの2か月間、全体の半数程度の社員がテレワーク。従業員からは
「自宅に仕事用のデスクがなくてつらい」
「集中できる空間がない」
「オンライン会議や通話時に家族に気を遣う」
など、一般的な賃貸住宅の間取りで仕事することの難しさを指摘する声が多数寄せられた。そこで、商品企画チームでが賃貸住宅の在り方を見直し、働ける機能を加えた「職住融合賃貸」のリノベーションを企画した。