そもそも無理のあった同一労働同一賃金(城繁幸)

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コロナ禍で生じた変化の兆し

   明るい兆しがないわけでもない。コロナ禍に伴うリモートワーク推進で、従来の年功賃金からジョブ化(職務給化)にシフトする企業が相次いでいる。決して交わることのなかった2つの賃金制度が、コロナ対応をきっかけに交わり始めているのだ。

   こうなると「過去の年功に対するご褒美だから」という言い訳は通用しなくなるし、企業側も生産性の低い正社員の賃金を減らして、優秀な非正規雇用に報いる努力をするだろう。それが10年後になるか20年後になるかはわからないが、いわゆる「メンバーシップ型雇用」なるものが完全に消滅した後には、雇用形態にかかわらず、業務内容に応じて賃金が決まるクリアな社会が実現するはずだ。

   最後に、今回の判決に対し「非正規雇用労働者の生活はどうするんだ」といきり立っているリベラル系の論者に、ひと言。

   国民の生活の面倒を見るのは政府の仕事であって企業ではない。増税による大きな政府を否定しつつ、実質的に企業に社会保障機能を丸投げすれば、企業はそれに見合う人材のみを「正社員」という身分で召し抱え、そうでない人材は排除することになる。

   自分たちのスタンスこそが、彼ら自身の忌み嫌う格差を生み出している現実に、そろそろ目を向けるべきだろう。(城繁幸)

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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