新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、「すし屋」の倒産が増加している。
企業信用調査の東京商工リサーチが2020年10月15日に明らかにした調査結果によると、20年1~9月の「すし屋」の倒産は23件。前年同期は15件で、それより8件(53.3%)増えた。このペースを年間に当てはめると、2016年以来4年ぶりに30件台に乗る可能性がでてきた。
インバウンド需要見込んだ大型店も
すし屋の倒産は、2001年と2004年に45件を記録するなど苦しい時代が続いた。ところが、その2000年代と比べて近年はインバウンド需要にも支えられ明るさを取り戻し、倒産件数は2019年には20件まで減少していた。
ところが、今年はコロナ禍の直撃を受けた。負債総額は35億3200万円(前年同期比104.1%増)。インバウンド需要を見込んでいた大型店の倒産も発生した。
原因別では、23件すべてが「販売不振」。近年続いている大手チェーン店などとの競合に加え、コロナ禍が追い討ちをかけた格好だ。
東京商工リサーチによると、「すし屋」は二極化が進んでいる。低価格を前面にした「ファミリー向け」チェーン店や、ネタや調理法をポイントにした「グルメ系」の店で構成する回転ずしなどのグループと、昔なじみの地元住民が顧客の街の「すし屋」だ。
回転ずしグループの店は幹線道路沿いの大型店が多い。次々とメニューや業態をリニューアルして目先を変え、コロナ禍でもその対策をアピールして、週末には家族連れの行列ができる。
一方、地元客相手の「すし屋」では、なじみ客の高齢化があり、価格面でチェーンに対抗することが困難ということもあり、苦戦が続く。すし以外のフグ料理や天ぷら、冬には鍋物を用意して客寄せを図るが、集客の決め手にはならないようだ。
これからの忘年会シーズンも、コロナ禍で迎えることになりそう。すし業界でも、「巣ごもり」特需で持ち帰りや宅配専門店は業績がアップしたケースがあるという。