GAFA分割論は1年以上前から浮上
GAFA分割論は、いま初めて出てきたものではない。米大統領選(2020年11月投票)で民主党候補が次々と出馬表明を行っていた2019年3月、すでに前月に立候補を明らかにした左派のエリザベス・ウォーレン上院議員が、アマゾン、グーグル、フェイスブックについて分割を提案。選挙戦の柱に据えたところから、米国では民主党VS大企業の構図がおなじみという側面もあってクローズアップされた。
反トラスト小委員会の報告書での指摘や、ウォーレン氏の公約を待つまでもなく、GAFAと呼ばれる4社の巨大化を問題視する指摘は、それ以前から、研究者やアナリストらが著作物などを通じて繰り返していた。
GAFAと呼び方が日本で広まるきっかけになった「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」(東洋経済新報社)で、著者であるニューヨーク大学スターン経営大学院のスコット・ギャロウェイ教授は、当時はまだ知られていなかったGAFAの本質を分析し、米国内外に警告を発した。
競争が自由だと考えられたインターネットビジネスの世界だが、検索、SNS、ECではそれぞれ1社しか存在しないことを指摘。その独占ぶりは、規制や処罰などで改善されるものではなく、法律によって分割すべきと訴えた。
なぜ、分割が必要なのか――。グーグルやアマゾンのおかげで、個人ばかりか企業などにとっても、デジタル社会のなかでは利便性が向上し、反トラスト小委員会の報告書が言うような「民主主義が制約を受けた」というような主張はピンとこない。
こうした指摘に対し、用いられるのは、1984年に実施された長距離電話会社AT&Tの分割だ。AT&Tは1980年代、米国の長距離電話市場の80%を占めていたが、このことが競争を阻害するとして8つに分割。これにより、AT&Tが電話ビジネス独占のため付属の研究所に、いわば塩漬けにしていた光ファイバーや携帯電話、データ通信などのイノベーションが開放され、一気に通信分野の改革が進んだ。
GAFAの分割でも同じようなことが期待でき、さまざまな分野でさらにイノベーションが期待できるとされる。