政治家の悪事を暴いた半沢直樹、西川氏の仇討ちのよう
ところが、日本郵政トップとして西川氏が見せたのは、行政の影に揺さぶられる巨大組織の力学と既得権争いで左右に振れる政治に翻弄され、「ザ・ラストバンカー」の輝きを失いもがき苦しむ姿ばかりでした。
日本郵政は小泉純一郎首相主導で完全民営化の道筋が決まり、その輝ける初代トップとして座ったはずの西川氏でしたが、その後の与党内での方針変更に加え、当時勢力を増していた野党からの横やりを受けた挙句、民主党政権への政権交代によって最終的には郵政民営化の見直しが閣議決定されるという想定外の事態に至ります。
結局、西川氏は志半ばどころかやりたいことはほとんどできぬままに辞任を余儀なくされるという、氏の過去を知る者としてあまりに悲しい姿のまま一線を退くことになります。
本人の心中は、忸怩たるものにあふれていたことでしょう。西川氏の訃報直後、ドラマ終盤で半沢直樹が金融界に圧力をかける政治家の悪事を暴き失脚させた姿は、西川氏の弔い合戦に勝利した仇討ちのようでもあり、氏の何よりの供養になるのかもしれない、私はそんな気持ちでドラマを見終えました。
「半沢直樹」ファンのみなさまには、リアル半沢直樹が感じられる西川氏の自伝「ザ・ラストバンカー ~西川善文回顧録」を読まれることをオススメします。現実に生きたバンカー半沢直樹の姿がそこにあります。
西川善文氏のご冥福を心よりお祈り申し上げます。(大関暁夫)