コロナショックが終わる日とその後に続く「構造的問題」を予言

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「コロナの本当のリスクは経済のリスク」

   本書では第1章で、コロナをめぐって、未来予測の手法を使い、これからどう事態が動いていくかを見通している。

   感染拡大の兆候が見え始めてから半年以上を経過しており、ワクチンや治療薬の開発の動きが活発化していることが報じられるようになってきたが、著者は製薬企業のコンサルティング経験から「その完成や量産体制が整うまでには1年半ほどはかかる」とみる。いまだ確実な治療法はないが、これまでの経験からケアの方法は向上。死亡率も低下が続いている。

   しかし、感染の危険回避を軽んじることはできない。経済活動が復活しているとはいえ、恐るおそるの動きで、今後、再度の緊急事態宣言、外出や移動、営業活動の自粛要請の可能性がなくなったわけではない。感染が再拡大すれば、命を失うような危険は以前より格段に低まってはいるが、緊急事態となれば収入の道が閉ざされ職を失う人たちがたくさん出ることになる。

   つまり「大半の日本人にとってコロナの本当のリスクは命のリスクよりも経済のリスク」になっているのだ。

   2020年は、本来なら東京五輪景気がけん引する、経済拡大の年だった。五輪のもたらす経済効果は30兆円と見積もられ、その効果の半分は関連したインフラ投資がもたらすもので、すでに半ば実現済み。だが、問題は大会開催を通じて得られるはずだった2兆円の直接効果と14兆円の「訪日外国人観光客資源」(需要)が滞っていることだ。

   感染症としてのコロナ禍は、ワクチンや治療薬の開発などの見通しから、2021年までとみられるが、日本経済をダイレクトに襲う可能性があるのは、延期された五輪の中止リスクだと著者。日本でコロナが収束していたとしても、他の国々でも同じとは限らない。日本が、ある国を受け入れたとしても、その国との競技を拒否する国があるかもしれない。IOCの最終的判断は不確実だが、開催するにしても20年のままの規模ややり方にはならず、いずれにしても影響はある。

   訪日外国人観光客の需要にしても、20年のままの額(14兆円)とはならない可能性がある。

   それだけではない。日本経済の前にはコロナのような期間限定の災厄だけでなく、もっと構造的な長期の経済問題が立ちはだかっていると、本書は指摘。「トヨタ自動車の衰退」「気象災害の危険」「アマゾン支配の猛威」「人口減少問題」がそれだ。新型コロナウイルスのほか、これらのそれぞれについて検討。終章で「日本崩壊を止めるには」として処方箋を披露する。

「日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方」
鈴木貴博著
PHP研究所
税別950円

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