文大統領の「自殺予防国家プロジェクト」は日本がお手本だった
ところで今回は、日本側が韓国側に「相談」した形だが、じつは文在寅政権が2年前に掲げた大プロジェクト「自殺予防国家行動計画」では、日本がお手本になっているのだ。韓国のニュースサイト「S-KOREA」(2018年3月15日付)は「日本と韓国はなぜ自殺率が高いのか 『責任を取って死ぬ』文化が関係か」という記事で、韓国自殺予防協会のオ・ガンソプ会長をインタビューしている。その中で、オ・ガンソプ会長は、こう語っているのだった。
「私たちは日本(イルボン)から多くのことを学んでいます。というのもひと昔前、日本は韓国よりも自殺率が高かった。しかし日本はここ5年ほどで大きく改善しています。韓国も改善傾向にありますが、それでもOECD加盟国のワースト1位を続けています。日本がどうやって自殺率を下げたのかを知るために、日本で多くの関係者に会って、さかんに勉強しました」
その成果の具体的な対策の一つが、猛毒性の高い農薬の生産や販売を禁止にしたことだ。
「日本と同じく韓国も高齢者の自殺が多いのですが、特に農村などの地方で目立ちます。孤立している高齢の多くが、農薬を使って自殺しています。そのため私たちの協会では、猛毒性の高い農薬の生産や販売を禁止しました。衝動的な自殺を防ぐためです」
日本の自殺予防のボランティア相談員を参考にした「自殺予防ゲートキーパー」の養成も進んでいる。100万人に増やす計画だ。また、「後追い自殺」を減らすメディア対策も日本から学んだ。
「韓国では有名人が自殺すると、それを追った後追い自殺が少なくありません。有名タレントが自殺すると、翌月の自殺者が増加するのです。その大きな原因に、メディアの影響力がありました。(日本で報道機関が自殺報道のガイドラインを作っているように)言論報道指針を打ち出して、韓国記者協会と協力しながら修正・補完しています。セミナーを開き、記者への教育も行っています。記者たちも当初は『国民には知る権利がある』と理解をしてくれませんでしたが、今では改善されてきました」
こと、命の大切さに関する分野で、政治や経済の対立と関係なく日韓交流が進んでいるのは、とてもいいことではないか。
(福田和郎)